「売れてしまう理由」

2)「トコトン分けること」にこだわる




Chapter-13 「マーケティング戦略時代」



(1)「戦術の企画」と「戦略の方針」


成功は学びから

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  • いつの時代にも、企業活動に関わる人・資本主義の社会で活動する人々は「どうすれば商品を、より多く売ることができるか」を考えてきたものです。さらに正しく表現すれば「そのマーケットで、より多くのお客様に、より多くの頻度で、より多くの商品を、より利益の上がる形で、提供し続けるには、どうすれば良いか」を考えてきたのです。そしてまた、これが「企業活動の姿」でもあったわけです。
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  • ポイントになるのは「より利益の上がる形」を守ること。商品開発も、広告展開も、企業にとっては「投資」であり、単に「経費を使うこと」ではなかったわけです。そして、もうひとつのポイントは「その形を続けること」です。マーケットが変れば、そのマーケットに順応し続けていくことが「企業活動」の姿であり、マーケットの変化、競合の動き、エンドユーザーの「ニーズの変化」に、常に対応していかなけばならないわけです。
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  • 誰もが、本当の意味で深く「ヒット商品の研究」にたずさわれば、「ヒット商品は、偶然できてしまうもの」ではなく「緻密に計算され作られているもの」であることがハッキリわかってくるのだろうと思います。ごく希に「マグレのヒットという商品」も生まれてきますが、そういう商品を作った企業が、2回、3回と続けてヒット商品を世に送り出すことはありません。つまり「企業活動」としては「単発のマグレ」では成り立たっていかないのです。
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  • 商品の売上を強化するための「画期的な【ひらめき】」を「アイデア」と呼ぶわけですが、「アイデア」というものは「戦術の企画」を意味していることがほとんどです。ある「戦術の企画」が成功すると、必ず「マネをする人」が登場します。そして、その「戦術の企画」の流行が起こるわけです。
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  • 現在の様にマーケットが細分化され様々な動きがマーケット毎にあると、動き自体が複雑になりわけがわからなくなるため、あえてマーケットが細分化する前の例を上げながらここまで説明をしてきました。かつて「ゼネラル・モータース」が自動車業界に「ファッション感覚」を取り入れ「真っ赤な車」を黒ばかりの車社会に登場させたことで大成功をおさめたことを見るや、フォードもクライスラーも、いいえ世界中の自動車メーカーが、その「戦術の企画(アイデア)」に追随しました。
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  • このように「ひとつの【戦術の企画(アイデア)】」が広く使われるようになると、それは「業界の常識」となり、まとまった考え方となります。その「間違いなく成功をおさめる【まとまった考え方】」を「戦略の方針(コンセプト)」と呼ぶのです。当時生まれた「自動車はファッションで売れる」という「戦略の方針(コンセプト)」が、自動車産業のメッカ「デトロイト」に拡がった時「デトロイト・コンセプト」という言葉までもが生まれたのです。
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  • 現在では、企業活動の中で「企画」「戦術」「戦略」「アイデア」「コンセプト」というような言葉が頻繁に使われています。しかしながら、本来的な意味合いで、そういった言葉を使っている人は、本当に希にいらっしゃる程度です。「売れない企画」は「企画」ではありません。「アイデア」は単なる「思いつき」ではありませんし、「コンセプト」もまた「思いつき」や「生産者の思い込み」ではないのです。
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  • 「戦術の企画(アイデア)」は、マ一に、世界中の企業人によって考えられています。しかし「全くユニークで独創的なアイデア」で成功をおさめているものは「皆無」であるといっても過言ではないのかもしれません。広い視野で見れば「成功しているアイデアの99%近くが、広くよく知られていいるもの、あるいは、かつて成功したことのある【戦術の企画】の焼き直し」でしかないのです。
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  • 「そのマーケットで、より多くのお客様に、より多くの頻度で、より多くの商品を、より利益の上がる形で、提供し続ける活動を続けている企業」には、「売れる商品」「売れる戦略」「売れる人間」という3つの要素が揃っています。この3つの要素が重なっているからこそ「利益を上げ続けている優良企業」が世の中に存在しているのです。このレポートは「売れる商品」についての考え方にスポットライトを当て「まとめたもの」です。
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  • まとめの章に入った最初の節の書き出しを読み、すでに「お気付きの方」もいらっしゃるかもしれませんが、商品開発において、このように「似た現象」がよく起こると、その現象の中から「共通の原理的なもの」が「戦略の考え方(方針)」としてまとまってきます。「自動車はファッションで売れる」というデトロイト・コンセプトは、その一例です。こういった「戦略の方針(コンセプト)」の中から、よく知られているもの、その考え方が世の中に確立されているものを集めて整理したのが、このレポートなのです。
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  • 時々、「良い企画はありませんか?」「画期的なアイデアはありませんか?」「この商品がカンタンに売れるようになる方法はありませんか?」「何か裏技のようなテクニックはありませんか?」といった問合せをして来られる人がいらっしゃいます。残念ながら、これらの「社会的な実態」を学んでいらっしゃらない方々に対して、いともカンタンに説明できるような「便利な戦略」も「カンタンな戦術」も存在しないのが現実です。
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  • 「インターネット」が世界を変えたなどという声もあるようですが、逆の言い方をすれば、ここに書き記した全ての「商品が売れる実態」を把握していれば「この○○は、この【戦略方針】を使えば売れる!」といったことも把握できるようになるのです。結局のところ、メディアが変っただけで「かつて成功したことのある【戦術の企画】の焼き直し」で成功しているところが生まれているに過ぎないのです。
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(2)「創造と科学」の「掛け橋」


「水と油の関係」の「橋渡し」

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  • ビジネスのあらゆる面で「創造性」が重要視されるようになってきました。いわゆる「アイデア神話」の時代です。「良いアイデア」があれば「売れる」といった「アンチョクな考え方」は、この「アイデア神話」から産み出されているようにも思います。アイデアと同様に、実にアンチョクに使われているものが「付加価値」という言葉です。「良い付加価値」を付ければ「売れる」といった「アンチョクな考え方」もまた「アイデア神話」から生まれているように感じます。
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  • さて「アイデアの時代」「情報化社会」になると、私たちには「おびただしい調査資料」や「驚くほどの莫大な量の科学データ」によって取り巻かれてしまうことになります。「アイデア(戦術の企画)」と「調査データ」は、きわめて対照的な性格を持っています。常に「二律背反」の関係にあるといっても過言ではないのです。
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  • たとえば「アイデアマン」「企画マン」と呼ばれる人は「感覚的な人」であり「資料などを振り回しているようではアイデアや企画などは生まれてこない」という考え方を持ちやすいものです。逆に「エンジニア」や「調査マン」といった「合理的な仕事」をする人たちは、とにかく論理的に物を考えるため、直感的で非論理的な「アイデアマンたち」の行動が「危なっかしく見えてしかたがない」と心配するものです。
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  • この「クリエイティブ(創造)」と「サイエンス(科学)」の傾向には宿命的なものが存在し、調査や科学が発達すればするほど溝を深める傾向にあるのです。この「クリエイティブ(創造)とサイエンス(科学)」との「亀裂」に橋をかけるのが「戦略の方針(コンセプト)」なのです。
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  • アイデア(戦術の企画)は、直感的に生まれて来やすい性格があります。ですから、その考え方を実行してみて初めて「成功するのか」「失敗するのか」がハッキリしてきます。しかし、実行したうえで「成功」が実証されれば、その「戦術の企画(アイデア)」が正しいかったと主張できることは当然の話でしょう。
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  • 最初に、ひとつの「戦術の企画(アイデア)」によって成功が導かれ、全く主観的なひとつの思いつきに過ぎなかったアイデアが成功の裏付けを持ち、重みのある考え方として定着するようになっていきます。その「戦術の企画(アイデア)」に付随していた考え方は、成功の【前例】となり、ひとつの「原理的なもの」になっていくのです。これが、実は「戦略の方針(コンセプト)」と呼ばれるものの性格なのです。
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  • しかしながら「戦略の方針(コンセプト)」は決して科学ではありません。単に「そういった考え方で成功した」という「方法の一例」に過ぎないのです。さらにいえば「戦略の方針(コンセプト)」は「商品概念要因」の複合的な「組合せ」の上で成り立っています。
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  • たとえば「伝統的な商品概念」で見るとどうなのか。「ライフサイクル」から見るとどうなのか。「ブランド観」から見るとどうなのか、「購買心理」から見るとどうなのか。こういった複数の「商品の概念要因」の中で「最も戦略的に重要視されるもの」を「最重要コンセプト」として「クローズアップされたもの」に過ぎないわけです。
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  • では「戦略の方針(コンセプト)」が「【感覚的な思いつき】からしか生まれてこないのか」というと、そうではないのです。当然、こういったレポートを参考にするなど「科学的な調査データ」から生まれてくることもあります。たとえば「知名度が上ればよく売れる」ということを示す資料がまとまっていたとしましょう。この資料に気付いた人は、当然「知名度を上げれば商品は売れる」という考え方に気付くことになります。
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  • こういった時に「カン違い」が生まれやすいのです。この「戦略的な方針(コンセプト)」を「原理」と呼びたくなってしまいやすいのですが、事実、これは「原理」ではないのです。これは「考え方のひとつ」に過ぎないのです。なぜならば、知名度は上ったけれど売れないという例外が、あまりにも多いからです。この場合「知名度」というものが「最重要コンセプトではなかった」という実態が明らかになったわけです。
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  • こういう風に「この戦術を使えば必ず売れる」といった「絶対に成幸する企画」や「アンチョクに成功するアイデア」などと思い込んで「たったひとつのコンセプト」を乱用しても、成功することよりも失敗することのほうが多くなってしまうのです。
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  • 「戦略の方針(コンセプト)」は、直感的な方向からも、科学的な方向かれも生まれてきます。むしろ「直感と科学の微妙な引力の中」で生まれてくるようなものです。こうやって「原理としての科学的性格」を持ちながら「全ての場合に適用できない」という「非科学的性格」をも持ち合わせているのです。ですから「自然科学」でなら「原理」と呼ばれるものであっても、企業活動といった「社会的現象」の中では「考え方」「方針」と呼ばれているのです。
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  • 全節でも述べましたが、「良い企画はありませんか?」「画期的なアイデアはありませんか?」といった問合せをして来られる人がいらっしゃいます。残念ながら「考えられる全ての成功戦術」を駆使することによって「ヒット商品開発」「ヒット商品への改善」がなされるわけで、無作為に「ひとつの戦略」を使ってみても「売れるようになる」ことなど「ありえない」のです。
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(3)「戦術の企画(アイデア)」は「模倣から」


 「企画立案」は「戦略」から生まれる。

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  • ある「戦術の企画(アイデア)」が成功すると、そのアイデアは同じ業界の中で、よく模倣される傾向にあります。しかも「模倣」は、おもしろいほど「成功」するのです。そうでなければ、だれもマネなどしないでしょう。ですから「創造(クリエイティブ)は、模倣から始まる」などともいわれているのです。事実、世の中は「独創的な創造」よりも「模倣」のほうが多いのが実態なのです。
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  • 「模倣(マネ)」という響きは、あまり良くありませんが、実態としては「独創(オリジナル)」などといったものは、きわめて例外的で希なものでしかないのです。創造の大部分は「過去におけるアイデア(戦術の企画)を現代風にアレンジしたもの」に過ぎないのです。「なんだ、マネか」と「模倣」を軽視しがちですが、成功できるように「必要な要因すべて」を「模倣すること」は、非常に難しいのです。
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  • このレポートは、わかりやすく説明するために「市場が細分化される前」の「原理的なもの」を例にあげています。しかし、こういった「戦術の企画(アイデア)」を、その時代に成功した時とは、まるで違った条件のもとで、もう一度、成功させるのは、かなり創造力(クリエイティビティ)が必要なことなのです。
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  • こういった「戦略の方針(コンセプト)」を数多く理解しているということは「成功する戦術(アイデア)」を、たくさん理解していることになります。しかし、わかっているだけでは「頭でっかち」に陥りやすく、「単なる物知り」ということにもなりかねません。数多くの「戦略の方針(コンセプト)の中で、今回、最も効果的なものはどれなのか」といった「状況判断」をする分析力がなければ「戦略の方針」などは、なまじ無い方が「回り道」をする可能性も減るわけです。
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  • 「アイデア(戦術の企画)」は、実に直感的なものですが、単なる「直感」ではプロとしては失格なのです。プロフェッショナルの世界では「運、不運にたよってはいけない」のです。ですから「戦術の企画(アイデア)」というものは「直感というより、もっと職業的なもの、もっと現実的なもの、もっと応用科学的なもの、もっと確実な匂いのするものである必要」があるのです。
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  • 「戦術を考えるプロフェッショナル」として、実にわかりやすいのが「プロの将棋の棋士」や「プロの囲碁の碁打ち」かもしれません。プロとしての腕を磨けば磨くほど「先手」や「定石」をたくさん把握しているものです。そうして、一手でも得をするように「先手」を読み、先手を取れる「手」を打つものです。しかしながら「絶対的な手」というのは存在しません。対局が進むにつれ、状況が変われば、以前に打った「最良の一手」のことも忘れて「次の手」を打つ必要があります。
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  • そこに「新しい創造力(先見力)」が必要となってくるのです。「プロとは、より先手を読める人のことだ」という人もいますが、「戦略の方針(コンセプト)は、戦術の企画(アイデア)の定石のようなもの」だといえるのかもしれません。この「定石」には、次のような4つのメリットがあります。

  • 1)アイデアを考える時間が短縮される
  • 2)アイデアを選択する「物差し」となる
  • 3)アイデアに「確信」が持てるようになる
  • 4)プロの水準を保つことができる

  • ここで問題になるのは、これら全てが「企業活動」であるということです。当然、商品を開発するには「ある程度の時間」が必要となります。「ライフサイクルの章」でもいくらか説明しましたが、ある商品が売れるには「絶好のタイミング」というものがあります。発売が早いと「価値訴求」に多くの時間と費用が必要となりますし、発売が遅いと「後発」としてマーケットで「良い商品であると(商品ブランドが)認知されにくい状態」を作ることになってしまうからです。
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  • 現状を把握し、数ヶ月後の予測ができなければ「後手の戦略」をとることになります。産業系の新聞の情報や、インターネットの情報を見てから対応したのでは「確実に遅い状態」となってしまい「利益の確保」は難しくなるばかりですし、企業ブランドが高まることもありません。企業ブランドが低下すれば、ますます売れない事態を招くことになります。つまり「商品開発」や「商品改善」には「販売現場(マーケット)における、前兆の予測」が必要となってくるのです。
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  • 逆に「思いつき」で商品を開発した場合、マーケットの把握ができておらず「発売時期が早過ぎて市場に理解されない商品」になってしまうことも多々あります。残念ながら「売れない商品」のほとんどが「生産者の思いつき生まれてきた、マーケットを無視した商品」でしかないのです。これもまた「販売現場(マーケット)の把握」ができていない結末にすぎません。つまり、「売れる商品開発」や「売れるようにする商品の改善」には「2手先(前兆)」を「活字情報化される前」に「販売現場で見抜く能力」が必要となってくるのです。
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(4)「戦術の企画(アイデア)活用」の「仕事術」


「売れない原因」がわかれば、アイデアは確実なものとなる。

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  • 「戦略の方針(コンセプト)」というものを、このレポートでは「成功した実績のある考え方(ビジネス・モデルのベース)」という意味で使ってきました。つまり「戦略の方針」を、多く理解していることは「成功する方法」を多く理解しているということになりますし「戦術の企画(アイデア)」を考えることが、実に効率的になるものです。
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  • 私が始めて「百貨店の販売促進部」という部署に配属されたころ、私には、こういった知識が実に乏しく「販売強化策」といった「アイデア」を考えるのに、今では想像もできないほどの時間を労していたものです。しかし、このレポートで述べてきたような「戦略の方針(コンセプト)」をいくつも理解することによって、「戦術の企画(アイデア)」を出すことが、実にスピーディーに、かつ確実なものとなりました。
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  • 上司から「本当に、それで大丈夫なのか?」という「攻撃ににも似た質問」や「否定に近い批評」が飛び出した時にも、カンタンには後退することもなくなっていったのです。企画という仕事において、こういった「実用的で専門的なレポート」や「実践的な著書」というものが実に少ないのです。それまで企画の仕事に関わったことのない上司が、急に上司として配属されてきたりした時に、そういう「素人上司」は「否定さえしておけば良い」と考えてしまうようです。
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  • それは「テレビ・ドラマ」などの、バーチャルな「ありえない世界」しか「企画の仕事をイメージする材料がない」という社会的な影響によるものかもしれません。企画の仕事に関しての「素人上司」からは、こちらが、どんな企画を提案しても「そうじゃない。」「ちょっと違う」「何かパッとしない」というような言葉が飛び出してくるのです。しかしながら、こういった「否定的な言葉」すべてが「素人上司には理解できない話でしかない」という「ホンネ」がある言葉だと把握できると、こちらの対応も変わってきます。
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  • カンタンです。「素人上司」が理解できるように「説明ができれば良い」だけの話でしかないのです。なにより「戦略の方針(コンセプト)」を説明するということは「過去の成功事例」も加味した上で説得することなのです。その部署に10年在籍したころ、その上司がやってきました。あまりにも否定ばかりが続き、何ひとつ仕事が進まなかった時、私は、その「素人上司」に、このように話をしたことがあります。
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  • 「今、販売を強化しなければならない商品を、ここにポンと10個程度の出されたとしても、商品を見た瞬間、それぞれの販売強化策を、たちどころに「ひとつずつ」10個とも出すことができます。つまり、その商品を、どういう角度から、どのように売り込めば良いのか、という戦略を1つの商品に1つずつ、10種類です。」
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  • なんだか、実に「偉そう」な言い回しで恐縮ですが、この言葉が私の口から飛び出した陰には、囲碁や将棋でいう「定石」や「先読み」といったものができていたからだと思います。プロの棋士たちが、あれだけ早く、しかも何百手も先を読み通す力を持っているのは「定石」としての「型」を数多く把握しているからです。「企画」や「商品開発」といった仕事についても、同じような「コツ」があるのです。
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  • 考え方の方向を定めず「ストライクゾーン」がわからないまま、メチャクチャにボールを投げていると、確かに「アイデアの数」は多くなりますが、「ビジネスとしては、まったく使えない」という「ボール球」ばかりを投げることになります。実際、まったくのムダになってしまうことのほうが多いのです。これでは非効率きわまりありませんし、考え出した「戦術の企画(アイデア)」に「自信」などは持てないのです。
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  • 「アイデア(戦術の企画)」というものは、決して論理的に正しいものばかり生まれてくるものではありません。むしろ「非常識」「ナンセンス」なものが飛び出してくるのが常です。だからこそ、捻り出した「アイデア」を自己評価でき、より良いものを選択することが大切な仕事になるのです。しかしながら、この「評価・選択の基準」というものが、実に不明確なことが多いのも事実です。「命令権」を持っていながら「よくわからない」から「否定だけしておく」という上司の存在が、まさにこの実態の証明だともいえます。
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  • できうる限り「明確な根拠」を持つようにするのが「理想」なのでしょうが、実際問題、そのような「根拠」を「販売現場で発見すること」は実に希な話です。何より「2手も3手も先」を読んで、事前に準備するのが「企画や商品開発の部署」の仕事です。実際の「企画」や「商品開発」といった業務においては「過去の成功例」や「考え方」から類推して評価・選択するしか「物差し」が存在しないのが実態なのです。
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  • このレポートに書き出したのは実践で活用できる最低限のレベルのものですが、これくらいの「複数」の「戦略の方針(コンセプト)」を把握していれば、捻り出した「戦術の企画(アイデア)」の中に「有効なものはこれだ!」という自己評価もしやすくなります。さらに、何百という「ムダなアイデア」を出さなくとも、ストライクゾーンに入っている「必要最小限度のアイデア」を考えるだけで、業務を進めていくことができるようになるものです。
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  • 逆に「戦略の方針(コンセプト)」を把握せずに自己評価ができない時には、いくつ企画を考えても自信が持てず、考える方向も、闇夜で目隠しをして鉄砲を数打てば・・・といった非効率的な結果になりやすいものです。一人ひとりが、こういう状態で「企画会議」なるものを開催しても、何が何やら、さっぱりわからない「単なる労力と時間のムダ」という事態が発生しやすくなってしまいます。
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  • このごろ、企業においては「会議」というものが非常に頻繁に行われています。「会議は、長引いたけれど、結局、何も決まらなかった」という話も珍しくありません。どうして会議が長引いてしまうのか、理由は明確です。「考え方の違う人が大勢いて、一人ひとりが違った意見を持ち対立する。どの意見にも「一理ある」ことが多く、意見の一致を見ることが難しいから」難しくいえば、こういうことになるのでしょう。
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  • このレポートで紹介してきた「数多くの戦略の方針」は、いいかえれば「一理ある考え方」のことです。こういった「一理ある考え方」を「10方向」から説明してきました。そして、それぞれの「戦略の方針」を個別に見れば「50種類の戦略の方針」を説明したことになります。これだけの「戦略の方針」や「考え方の角度」を持ち合わせていれば、会議に参加しても、きわめて柔軟な態度で対応できるわけですし、反対者を納得させるだけの説明もできることでしょう。
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  • 逆に、これらの「考え方の角度」や「戦略の方針」を把握せず、限られた「角度」で「限られた戦略」を定時された時に、「自分の理解できない戦略を容認すること」はできなくなってしまいます。「商品の販売強化」における「戦略の方針の全貌」を整理し、把握しておくことで、自分が「戦術立案担当者」として、どんな立場で何を考えているのか、他の人がどんな立場で何を考えているのかを、実に「立体的」に理解できるようになるのです。
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(5)「実践マーケティングの時代」


「レポート」の「まとめ」

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  • ジネスというものは「無意識」でおこなうものではありません。「偶然」でおこなうものでもありません。すぐれた商品を考え出し、すぐれた狙いを以て意識的に競争し、意図的に需要を開拓していくことこそがビジネスです。
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  • そのために、色々な「戦略や戦術」を考えるのですが、思いついた考え方が効果的なものなのかどうかを事前に判断することは、きわめて難しいことだといえるでしょう。難しいうえに、企業活動が大型化しているわけですから、間違った判断をしてしまうと企業に大きな損失を与えることにもなります。だからこそ、多角的に検討し、充分に効果的であるという事前判断が必要になってくるのです。
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  • 「戦略の方針(コンセプト)は、成功した原理を含んでいますから安全性の高い考え方ではあります。しかし、その使い方を間違いやすくもあるのです。「戦略の方針(コンセプト)は、過去において成功した実績を持ってはいますが、マーケットは常に微妙に変化を続けています。さらに、情報化社会としてインターネットやデジタル放送が充実している現在、その変化のスピードは加速度的に速くなっているのです。
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  • ですから、そのふんんだけ「マーケットの実態」と「ズレ」が発生しやすくなっています。とはいえ、数ヶ月先に販売を開始する準備を事前に始めなければ「商品の開発」や「売上強化策」というものは「後手」に回ってしまいます。さら「、過去的知識による「判断」を「近未来」を予測しながら習性していくことしかできない」という限界も持ち合わせています。
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  • 「戦略の方針(コンセプト)」は、成功した過去が定着した「人間心理の欲望を【感動的に実現させた現象】」ですから、ここから出発して「現実」に合わせることができれば、成功の確率が高くなることは明らかです。しかし、この「判断」をコンピューターに任せるのは、かなりのムリがあります。コンピューターは【感動】できませんし、販売現場で「データになっていない情報」を分析し未来を予測する術がないのです。
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  • つまり、情報化社会になった分だけ「科学的で基礎的なデータ」が増えた分、バランスを取るように「未来を確実に予測できる人間」が必要となっているのです。「文字情報になる前の現象」を把握し、コンセプトの分類を確実に行って「2手も3手先も先を予測する能力」を持ち合わせた人間になるしか方法がないということです。
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  • コンピューターの場合「ハードディスクの容量」や「メモリの大きさ」といった「性能」というものが作られた時点で決まっています。さらに、こういった「予測」という分野はコンピューターには不得意な分野です。
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  • しかしながら、人間は「鍛えれば、活性化していく」という「筋肉」や「脳ミソ」を持ち合わせています。将棋の棋士や、オリンピック選手も「生まれた状態」で「性能」や「強さ」が決まっているわけではありません。「鍛えて活性化」したからこそ「筋肉」がつき、「先読みができる脳」が育っているのです。
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  • 「売れる商品」を作るためには、「登山家が天候をズバリ予測できる」ように、「文字情報になっていない現場情報」を把握し「未来予測」ができるようになる以外に方法はないのです。
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  • 最後になりましたが、「頻繁に耳にするし、自分でも使っているけれど、意味がよくわからない言葉」は、よくあるものです。「アイデア」や「コンセプト」という言葉が、実際にそういった言葉の一例であるといえるでしょう。こういう「あやふやな言葉」が、厳しいビジネスの世界でつかわれているのですから、世の中は実に面白いものです。
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  • ビジネスの世界で使われている「コンセプト」という言葉は、使いようによって「さまざまな形」に変貌するものですが、大きく分けると、次のようになります。

  • 1)「アイデア」と同義語的に使われる「コンセプト」
  • 2)「考え方」という意味合いで使われる「コンセプト」
  • 3)「概念」という意味で使われる「コンセプト」

  • このレポートで使ってきた「コンセプト」は、第2の用法をメインとしたものです。創造的な仕事をしている人々の中には、第1の用法として、この言葉を使っている人も多いようですが、このレポートでは、かなり多くの人々に定説として受入れられている考え方として、第2の用法を用いています。
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  • 「コンセプト」というものは「こういう考え方が成立する」という「社会科学的な仮説」のようなものです。「自然科学的な原理」は「1+1=2」というように「絶対的な答」を「ひとつ」導くものです。しかしながら「社会科学的な仮説」は「吉野家の牛丼はうまい(という人が多い)」といったように「他の答(少数の人は、おいしくないという)」も存在する特徴があります。
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  • こういう意味合いで「購入確率の高い状態」を作っていくためのものですから、どこまで「効率的」になったかというのは、この考え方を活用する人の「先手を読む能力」に随分と影響されてしまうことになります。
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  • このような形で「実践マーケティング」をまとめた著書やレポートは、私の知る限りでは存在しておりません。なので、多くの文献などを引っ張り出してレポートとしてまとめるのに、かなりの労力を要することになりました。しかしながら、不十分な点も多くあるように思います。
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  • 何よりも「現在の商品購入理由」の「個人的趣味によるもの」という部分への「企画立案・商品開発手法」については、ほとんど書いておりませんし、「前兆を予測する具体的な練習方法」の説明も不十分であると感じております。
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  • しかしながら、このレポートの母体は「業績の良し悪しによって、評価が左右される人間」が、有効であると「実践の上で確認したもの」ばかりですから、実践的に「マーケティング」を活用する必要のある方々にとっては、かなり役立つものだと期待しております。に、
  • 最後の最後になりましたが、原稿量を調べてみると「専門書」の厚さで「3冊分」の原稿量があったことに驚いております。大変な思いをして、このホームページを急いで作ってくださった仲間たちに感謝する限りです。
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