「売れてしまう理由」

2)「トコトン分けること」にこだわる




Chapter-7 「セールスプロモーション」



(1)セールス・プロモーションから見た売上強化要因


 「売上強化」の「投資ウェイト」

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  • 100円の商品で、そのうち15円もの広告費が投じられている商品があります。これは、決して珍しいことではありません。こういった商品は「広告型商品」といわれる商品です。一方で100円の商品で、そのうち広告費が1円という商品もあります。これは「非広告型商品」といわれる商品です。
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  • 広告費というものは販売活動費用の「ひとつ」でしかありません。広告費が1%の商品というのは、結果的に、他の部分に販売活動費用が投じられているということでしかないわけです。セールスマンの増加に投資をする場合もあれば、ディーラーヘルプス(リベートや値下げ)に費用を投じることもあります。また「直営店」を立ち上げることさえあります。
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  • 結果、販売促進(セールス・プロモーション)コストは、どこかで必要となってしまうのです。ここから「企業活動のどの部分に費用を投じれば効率的で効果的なのか」という疑問と考え方が生まれてくるのです。
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  • こういった疑問は、正直、業績が下がり企業経営が苦しくなっている時に浮上しやすい問題です。さらに、そういう時だからこそ「決断がむずかしい問題」となりやすいのです。
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  • 「セールスマンを100名増員すれば、売上をどこまで増やすことができるのか?」「セールスマンを100名増員する替わりに、その給料に見合う4000万円を月々広告費として投じれば、売上はどこまで延びていくのか?」こういった比較はカンタンにはできません。
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  • しかしながら、実験することは可能です。さらに、経験的にある程度判断することもできるのです。こういった実績が蓄積され、企業活動のスタイルを作っているのです。その「スタイル」が企業の個性となり哲学とさえなっています。
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  • これを「企業哲学」「経営理念」「経営哲学」と呼ぶのです。マーケティングの専門原書から用語を引っ張り出すと「マーケティング・ポリシー」という言葉になるのでしょう。
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  • 「広告を重視する会社(化粧品メーカー・飲料メーカーなど)」「セールスマンを重視する会社(コピー機器メーカー、保険など)」「研究や新製品開発を重視する会社(薬品メーカー・旅行代理店など)」といった具合に、それは業種によっても変ってきます。
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  • こうした傾向を、さらに詳しく正確にとらえようとすると「セールスプロモーション・マーケティング・ミックス・バランス」という考え方が登場してきます。要するに「売上をあげるために、何にどれだけの割合で投資をするか」といった考え方です。言葉が長いので、後は「セールス・プロモーション・バランス」と称することにしましょう。
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  • セールス・プロモーション・バランスとは「商品や流通網、セールスマン、広告・・・」といった販売促進活動のさまざまな養親を、どのような「ウェイト・バランス」で組み合わせていくか、といった考え方です。
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  • セールス・プロモーション・バランスのあり方は、企業の体質や、商品の正確によって、さまざまに変化していきます。極端な言い方をすれば「成功事例」を見て、その事例に従った「最重要項目」に投資のウエイトをもっていけば売上の増加が最も期待できることになります。
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  • つまり、セールス・プロモーション・バランスの具合を見ていけば「その商品がどうやれば売れるか」という「その企業の基本的成功パターン」が浮き彫りとなってくるわけです。商品の投資バランス=「セールス・プロモーション・バランス」を見ようとするのはこのためです。
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  • 「セールス・プロモーション・バランス」という観点から見た商品の売上強化要因は、次の4つの要因によって組み合わされているといえるでしょう。

  • a)「商品中心型の構造」
  • b)「セールスマン中心型の構造」
  • c)「流通網中心型の構造」
  • d)「広告中心型の構造」

  • この4つの要因とバランスは、その企業が「商品を売ること」にたいして持っている「方向性」の基本的な4つのスタイルだということがいえます。
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  • 「商品中心型」は「売れる商品を作ることに徹底しよう」という考え方です。日本においては「ソニー」の経営哲学、「本田技研」の経営哲学が有名です。世界的には「アップルのコンピューター・マッキントッシュ」や「携帯電話・i-Phon」さらに「Google」、「ナイキ」といった企業がこれにあたります。しかしながら、一般的にいえば、こうした企業は非常に少ないのです。
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  • セールスマン中心型のセールス・プロモーション・バランス型は、一般的に産業用商品に多いといえるでしょう。「B to C(Business to Customer)スタイル」よりも、「B to B (Business to Business)スタイル」に多いことは当然です。とはいえ「保険」などの金融商品に関しては、やはりこのセールスマン中心型となってしまいます。
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  • 流通網中心型の典型は、石油メーカーのガソリンの販売において見られるといえば理解しやすくなるでしょう。こういった商品は、販売網(サービス・ステーション)が最も大切な要因となりますし、当然、そこに最大の費用が投じられてしかりです。
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  • 広告中心型のセールス・プロモーション・バランスになると、広告に対する期待が最大となります。事実、化粧品メーカーや、缶コーヒーなどといった商品カテゴリーにおいては、広告こそ最大の効果をあげる要因となりやすいのです。
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  • このように、基本的ないくつかの考え方があります。こういった考え方は、一貫して企業活動に反映され、広告活動にも反映しているものです。このような考え方を無視してしまうと、必ずとはいえないまでも「ムリ」「ムダ」「ムラ」が発生し大きなロスが生まれてる可能性があるわけです。
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  • たとえば、広告中心型商品の時には「広告に投資ウエイトを集めなければ売れない」という考え方で「販売戦略」が組み立てられるわけです。ところが、販売網中心型の商品の時には「広告は補助的手段にすぎず、広告だけでは売れない」という考え方で「販売戦略」が組み立てられなければなりません。
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  • こういった「肝心カナメの投資ウエイト」を間違えると、非効率な企業活動が出来上がってしまうことになるのです。
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(2)広告中心型商品


マス・メディア販売支援型

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  • このタイプの商品は「マスメディアによる支援で売れる」と考えられている商品です。ですからマーケティングの専門家からは「マスメディア商品」などともいわれるぐらいです。単純に「有名になれば売れる」といった傾向があると言い切って良いでしょう。
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  • マスメディアによる支援で売れる商品であるため、マス・コミュニケーション独特の現象が起りやすくなります。たとえば、現在有名になっている女優・女性タレントをCMキャラクターとして一斉に使った資生堂のシャンプー「TSUBAKI」は爆発的に売れたというのは、まさに近年の好例といえるでしょう。
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  • マスメディアによる支援商品が、マスメディア独特の効果で売れることは冷静に考えていくと、非常に不思議な感じもします。そのヒミツは、ひとことに要約すると「イメージ」だとされています。ですから、マスメディア支援商品の販売強化策を検討する際には、イメージの問題が必ず話題になります。イメージについては、前章で述べたので割愛します。
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  • マスメディアによる情報発信というものは、パーソナルなコミュニケーションとは一線を画して、一種、独特のものだといえます。たとえば、「人間の言葉を喋る犬がお父さん。」という設定でCMが毎日のように流しているソフトバンクですが、これが高感度CMとして各新聞社に紹介されていたりします。便利だとか、買いなさいとか、押しつけがましいことは何もいっていませんが、そのCM効果は高く評価されています。
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  • グリコのチョコレートもまた「磯野家の25年後」といったCMを作りました。「タラちゃん」「イクラちゃん」「ワカメちゃん」「カツオくん」が大人になって、久しぶりに会った。というドラマをCMに仕立てているだけです。やはり「美味しい」とか「買いなさい」などといったことは何も言っていませんが、そのCMの効果は高く評価されています。
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  • このように、マスメディアでの支援についていえることをまとめると、次の3つの特徴が浮き彫りとなってきます。

  • a)「印象に残る感覚的表現」
  • b)「毎日のように続く反復性」
  • d)「商品の性格にマッチした好感」

  • といったコミュニケーションの性格が、そこにあることがわかってきます。
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  • マスメディア支援型商品の種類
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  • 電化製品、自動車、化粧品、チョコレートなどの菓子類、飲料、酒類、シャンプー・リンス、カップ麺などインスタント食品、薬品、など
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  • マスメディア支援型商品と広告費
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  • マスメディア支援型商品の場合には、通常、販売額の10%強が広告費として投じられています。極端な例をあげれば、化粧品や薬品など、商品によっては広告比率が40%を越える商品もあるのです。逆に、産業機器を扱うような商品カテゴリーについては、広告費は商品の1%を切る場合もあります。
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  • では、マスメディア支援中心型商品には、どれくらい広告費を投入すればよいかが大きな問題となりますが、決め手になる考え方というもものは存在しないのです。統計的には10%程度までは積極的に投入するというのがひとつの目安にはなっています。しかしながら、それはあくまでも目安であって、結果的にはケースバイケースとなるのです。
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  • また、マスメディア支援型企業が、マスメディア支援型商品を「本当に売れる商品」と判断した場合、広告費を先行投資的に高比率投入するという戦略的な考えに基づいた施策を講じる時もあります。資生堂のシャンプー「TSUBAKI」などは、まさにこの好例といえるでしょう。最近では、ソフトバンクが「I-Phone」に対して、このような戦略を用いているようです。
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  • 日本のサンスターと提携したヘアースプレー「Vo-5」の母体「米・アルバート・カルバー」社の社長ラビン氏は、40年も前に次のような考え方で広告に経費を投入していたのです。
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  • 「最近、広告に経費を投入した商品(Vo-5ヘアースプレー)が売れ始めたことで、広告比率は40%台に落ちてきました。しかし、発売当初の広告比率は、71.8%に達していたのです。なかには、常識では考えられないようなマーケティング・ポリシーだという人もいます。
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  • もし、商品が売れ始めてきたら、広告をドンドンつぎ込むというのが私たちの経営哲学なのです。この考え方で、私たちは販売網の弱さをカバーしてきました。確かに、損益分岐ラインに配給網が完成するまで、この費用は大きな負担となっていました。しかし、私たちは商品にも、広告にも、絶対の自信を持っていたのです。
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  • こうして第一四半期が終わる頃、販売に対する広告費は、71.8%に達していました。私たちの考え方は、販売を伸ばすために広告予算を拡大するということでした。そこで販売が記録を更新していることを確認し、若干予算を縮小したのですが、結局、その翌月、さらに予算を拡大したのです。
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  • もし、あなたの商品と広告が効果的で正しいものであるという確証を持てる調査を行い、その結果を予測できるのであれば、ズバッとやることです。あなたの力の続く限りの資金を投入すべきです。もし、あなたの商品が、ユーザーの求めているニーズと完全に一致しているのであれば・・・
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  • その上で、もし、その商品が競合商品より本当に優れたものであり、さらに、もし、その良さがユーザーにとって実にわかりやすいものであるならば、間違いなく、この戦略は成功するでしょう。」
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  • 気をつけて頂きたいことは、いくつもの「もし」がついていることです。間違いなく、このコメントについては、その「もし」の重複に成功の鍵が隠されています。
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  • ラビン氏がいう、そのカギは「テッド・ベーツ社」の「USP理論」とほとんど重複しています。(USP理論については、前章で紹介したので、ここでは割愛します)
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  • マスメディア支援型商品の性格
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  • このタイプの商品は、前述のように日常消費のカテゴリーが多いのが特徴です。それらの特徴を列記するならば、次のような項目があげられます。

  • a)「サイズの小さな商品が多い」
  • b)「日常消費の商品である」
  • c)「カテゴリーの知名度は高い」
  • d)「衝動買いされる傾向が高い」
  • e)「現金で購入できる価格帯の商品である」
  • f)「全国的に販売可能な商品である」
  • g)「購買層が広い傾向がある」

  • マスメディア支援型商品は、こうすれば売れやすくなる。
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  • マスメディア支援(広告)をマーケティング活動の中心にしている商品に対して、代表的な戦略の考え方を列記すると次の3つの特徴があるといえます。

  • a)「広告で販売する」という戦略哲学
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  • このタイプの商品には「広告で売る!」という戦略的哲学が明確にあります。そのために広告を主力にしているわけです。つまり、すべてが広告を中心にして考えられます。つまり「こういう広告を作るからこそ、こういう商品でなければならない」という広告を戦略を基軸にした考え方で商品が出来上がってくるわけです。
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  • 「無印良品」の商品バリエーションは、まさに「広告のコピー」が商品開発の戦略哲学になった好例ですし、吉野家の「早い、安い、美味い」も、支流商品の開発哲学になっている好例と言えるかもしれません。

  • b)「広告で差別化する」という戦略哲学
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  • このタイプの商品カテゴリーは大量生産、大量販売で、競争が激しいのが一般的です。つまり、商品自体が競合商品と「類型化」しやすい特徴があります。差別化をする方法は、広告以外にも色々ありますが、広告表現による差別化に、最も大きな期待が持たれる傾向にあります。
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  • 「洗濯洗剤」「洗濯柔軟剤」「風邪薬(感冒薬)」といったものは、まさに「広告による効能の差別化商品」であるといえるでしょう。
  • c)「指名買いをさせる」という戦略哲学
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  • このタイプの商品は、広告によって徹底的に差別化を図り、締め以外をさせることによって販売するという商品です。知名度が高ければ高いほど締め以外する確率は高まりますし、ブランド・イメージが高ければ高いほど指名買いが増える傾向にあります。衝動買いされる商品は、指名買いが最も顕著に現れます。
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  • 商品中心の哲学で経営をしている企業の商品が多いのが特徴と言えるでしょう。現在では「i-Phone」などが、まさにこのタイプの商品ですし、これ以上の好例はないのかもしれません。
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(3)流通網中心型商品


「販路の拡大」により絶対的地位を築いていく

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  • 日本で、売上を強化するために流通網が特に重視されるようになったのは1950年ごろだと言われています。前章の「ライフサイクル」でも紹介したように「成長期」は「ボリューム戦略が必勝の鉄則」といわれています。1950年代といえば、日本が高度経済成長をむかえたころ「販売窓口」が多ければ多いほど売れた時代です。
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  • なぜ、このような昔の話を引っ張り出すのかと不思議に思うかもしれません。しかしながら、この「考え方」は現在でも充分に応用できるのです。結果的には「販売チャネルを増やせば売上が伸びる商品」ということですから、時代や販売状況が変わっていったとしても、非常に参考になる考え方でもあるのです。
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  • どのような企業にとっても流通対策は重要な問題となりますが、ここでは特にセールス・プロモーションという見地から、投資の角度をもって、流通対策費が圧倒的に大きなウエイトを占めている商品を取り上げ、流通網中心型の商品として考えていきたいと思います。
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  • 流通網中心型商品の種類
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  • 「石油(ガソリン)」「自動車」「バイク」「携帯電話」「ファースト・フード」「クリーニング」など
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  • 流通網中心型商品の性格
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  • このタイプの商品は、自動車などのように大きいものと、ガソリンのように大きくはないけれど流通対策を重視するものと、小売店マージン中心主義(ネット販売も含む)となっている一部の薬品などの3つのタイプが考えられます。いずれにせよ、マーケティング費用の大部分を流通対策費、ディーラーヘルプスに投入しているわけです。
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  • 第1のタイプは、ガソリンなどの場合です。こういった商品は、商品自体が取り扱い難いことと、自動車の出入りや停車が必要となるため「サービス・ステーション」という独特の販売スタイルを取らざる得なくなりました。とはいえ、売上は、この販売店の絶対数によって決定しているわけです。
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  • 第2のタイプは、自動車などの大型商材です。こういった商品は、商品価値が高いこと、大きな店舗が必要になること、アフターサービスが必要なこと、といったいくつもの要因が流通対策費を大きなものにせざる得なくなっているのです。
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  • 第3のタイプは、本来は「マスメディア支援型の商品」であるけれど、競争上、勝ち目がないため、しかたなくマーケティング費用を思い切って販売店へのマージンとして注ぎ込んでしまおうという場合です。結果からいえば、これは消費的な応急処置ともいえる対応策でしかないため、ジリ貧となるケースがほとんどです。
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  • なぜならば、大手の企業はディーラー対策にも力を入れながらマスメディア支援もおこなっているため、エンドユーザーの指名買いのチャンスを、大手企業にみすみす譲ることになってしまうからです。では、全く勝ち目がないかというと、そうではありません。「露出効果」を増やしていけば、少しずつですが巻き返しが可能となります。
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  • ただ、ここでは具体的な対応策を細かに紹介することよりも、全体像を把握いただくことを重視しておりますので、そういった個別の対応策は個別に御質問いただくことで対応したいと思います。
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  • フランチャイズ制
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  • こういった「実践が始まった初期の話」には、その注意点や参考になるポイントも多いのです。当時は「ディーラーの数」を重視することによあって販売の効果が絶大に上がった商品もあったのです。この考え方が根本にあります。わざわざ買いにいったけれど商品がなかった・・・では、話にならないからです。
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  • とはいえ、流通網の強化はカンタンではありません。成長期においては、どのメーカーも流通網の強化を狙う戦略をとるものです。結果、あせればあせるほど「販売店」に足下をみられ、いわゆる「リベート競争」の泥仕合にある傾向が強いのです。
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  • こういう状況に対応するために誕生したのが「フランチャイズ制度」でした。フランチャイズは「商業上の独占権」です。最初に導入したのは「プロ野球」でしたが、商業的な歴史をたどると「コカ・コーラ」によるフランチャイズ制がスタートだと言われているようです。
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  • フランチャイズ制は、全国をいくつかの地域に区分し、特定の企業にその地域における販売独占権を与えるものです。こうすれば外部資本を導入できるうえに、流通網を確保することができるからです。
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  • とはいえ、フランチャイズ制を導入するには絶対的な条件が必要になります。まず、メーカー側が優れた商品と、高いマーケティング力を持っている必要があります。さらにマスメディアにおける大々的な支援をまとめて実施できなければなりません。流通網に重点をおきながらも、流通網に編重せずに、エンドユーザーの心をもつかむ一本化した支援体制と調和する状況が必要となります。
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  • つまり、こういった「現代的なセールス・プロモーション・バランス」といった複合的なバランス感覚と戦略が必要になってくるわけです。
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  • ロッテのガムは、なぜ独占状態なのか?
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  • ロッテはいうまでもなく「ガム」のトップメーカーとして独占的に君臨している企業です。しかし、過去においても最初から独占を続けていたのか?というとそうではありません。そこには50年もの歴史と、トップに君臨するための活動が過去に存在したのです。
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  • 1962年頃、ガムといえば「ロッテ」よりも「ハリス」というメーカーのほうが有名でした。テレビのクイズ番組(ハリスクイズ)や、アニメ「ハリスの風(ハリス少年が活躍する話)」のスポンサーとしても、有名な企業があったのです.。1958年に生まれた私にとって、こういった番組は幼いころの記憶としてしっかり残っているのです。
  • この頃、ハリスは従来の流通網を重視して「問屋」に対して重点を置いていました。それに対してロッテは販売店への働きかけを重視したのです。ロッテは1961年、ご家庭の奥さん達を「ガムの宣伝員」として組織化しました。また、ご家庭の奥さん達による「市場調査チーム」を編成したのです。
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  • 「奥様による市場調査チーム」は、一切営業活動を行っていません。単に「ロッテのガムを置いてある店」と仲良くする。競合商品がどれぐらいおいてあって、ロッテの商品がどれくらい置いてあるのか、また、ロッテの商品、物流などに不都合があったら、話を聞いて「営業所」に連絡をするという実にシンプルな活動を行ったのです。
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  • こういった「市場調査網の構築」によって、ロッテは市場動向を適確に把握することができ、さらに適確なアプローチを行うことができたというのです。(実のところ、うちの母親が、この奥様調査員だったので、この話はしっかりと覚えています)
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  • ロッテhあ、同時に販売店の拡大にも力を注いだのです。ガムは安い価格の商品ですし、場所をとらない商品ですから、菓子店、タバコ店、駅の売店、薬品店、喫茶店、など「置けるとこには、どこにでも置く」という戦略をとったのです。結果、どこにいっても「ロッテのガム」がある。という状態が出来上がってしまいました。
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  • 大人も、子どもも手を出せるほどの商品でしたし、どこの店で買うかも問題にはなりませんでした。つまり、ストアー・ロイヤリティーの低さが、逆にプラスに働いたわけです。問屋に販売を依存していたハリスと、自社で新規販売網を開拓したロッテとは、ここで大きな差がついたのです。
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  • 「ハリスの商品は扱っていないけれど、ロッテの商品ならある」というお店が、いたるところにできあがってしまったのです。結果、1964年、ハリスは「カネボウ食品(現・クラシア)」に吸収合併される結果となってしまったのです。
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  • そこから、ロッテの絶対的な独占状態が続いています。コンビニエンス・ストアにいって陳列状態を確認すれば一目瞭然ですが、現在は絶対シェア(43%以上)以上の「独占状態」になっているのです。
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  • ここで、ご理解いただきたいことは「ストアー・ロイヤリティー」の低い商品に関しては、販売場所の絶対数が売上に直結するという事実です。「どこにいっても、この商品が目につく」という状態を作ることが大切なのです。これはインターネット上でも同じことがいえそうです。
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  • この大事件の後、別の業界でも「店頭販売露出度の大きさ」が「売上に直結する」という事実をふまえた活動が頻繁に起っています。「ハンドクリーム」の世界でも「カネボウのアトリックス」と「花王の二ベア」が、薬品店、コンビニエンス・ストア、ドラッグストア、スーパーマーケットを含めた場所で「陳列場所を全国的にとり合う」という「競合2社によるローラー大激戦」が繰り広げられたことは、マーケティング業界ではあまりにも有名です。
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  • ホンダの自転車屋作戦
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  • 1960年代当時は、自転車が街の移動手段でした。現在のオートバイを扱う「ホンダのディーラー」の大部分は、かつては街の自転車屋さんだったのです。結果的に「商店街の自転車店」だったところばかりが、ホンダバイクのディーラー店となっていきました。
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  • 1950年代までの日本のオートバイ・メーカーは「目黒」と「陸王」(ともに現在は無くなっています)が主流でした。ホンダはオートバイの世界では、チューインガムのロッテと同じく後発メーカーだったのです。そこでホンダが目につけたのが、当時「商店街の顔役」であった「自転車屋」さんでした。
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  • オートバイが自転車屋さんで売れるのか? 壊れた時に、自転車屋さんでオートバイの修理ができるのか? という疑問も出てきそうですが、そこは「2年間5万キロ、長期品質保証」を行い、さらに主要地区に「サービス工場」を作っていったのです。
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  • 何せ、当時の移動手段は「自転車」が主流なのですから、商店街の中心的存在もまた「自転車店」だったのです。つまり「自転車屋のオヤジ」は、商店街では顔役であり、商店街の一店舗が「配達に使いたいから、スーパーカブを買いたい」と言い出せば、芋づる式に「スーパーカブ」が売れていったという経緯があるのです。
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  • 現在、バイクを扱っている「ホンダのお店」を観察してみると、そこは「かつての商店街だった」ことがわかってくるだろうと思います。高所得者層を狙った「目黒」や「陸王」は、遠くの都会にわざわざ買いにいかなければ買うことのできない高級品。壊れた時の修理もまた大変だったのでしょう。
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  • しかし「庶民のスーパーカブ」ならば、安価で「商店街のオヤジ」のところで買える。そのうち、少し大きなバイクも扱う。こういう絶対的な「販売店の数」で、他のメーカーを大きく引き離し、ホンダのオートバイを扱うディーラーを全国的に拡げていったのです。
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(4)セールスマン中心型商品



 「コンサル販売型商品」の販売


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  • セールスマン型商品は、いわゆる「訪問販売商品」で、セールスマンが訪問して販売するのが基本です。最近は、大量生産、大量販売が基本となっているので、このタイプの商品は減少しています。
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  • アメリカでは1960年代に化粧品メーカーである「エイボン・プロダクト社」が徹底した訪問販売で、世界第一位の売上をおさめました。その事例を参考に日本では、ポーラ化粧品が同じ方法でかなりの成果をおさめていました。生命保険もまた訪問販売をしている業種であるといえるでしょう。
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  • 不動産の販売も、自動車の販売も、このスタイルが基本となっていますが、突然の訪問というケースは激減し、展示会や、インターネットでの資料請求といった「問合せ」に応える形を取るのが近日のスタイルとなっているようです。いずれにせよ「セールスマンを活用すると効率のよい商品」であることが指摘できるでしょう。
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  • セールスマン型商品の例
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  • セールスマンの訪問販売が効果をあげる商品。「産業用商品」「生命保険などの金融商品」「不動産」「自動車」など
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  • セールスマン型商品の性格
  • セールスマンが訪問して販売する形をとると、人件費という大きなコストが必要になってきます。したがって、セールスマンが訪問販売をしても採算がとれる「効率の良さ」が求められます。

  • a)「ユーザーが自分では会に出ない商品です。
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  •   商品によってはユーザーが積極的に商品を買いに出かけないことがあります。
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  •   (1)商品をよく知っているけれど、買いにでかけない商品
  •      (生命保険など)
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  •   (2)商品を知ってはいるが、買いにでかけない商品
  •      (産業用商品など)
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  •   (3)販売競争の手段として訪問販売する商品
  •      (銀行、証券、不動産など)
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  • b)「一般的に高額な商品である場合が多い」
  • c)「買うことに対して迷いが生じる場合が多い」
  • d)「広告によるセールス支援が多くの場合実施されている」
  • e)「ユーザーが偏っている場合が多い」

  • こういった商品の場合、セールスマンによる販売手段が、最もロスの少ない方法と考えられるわけです。
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  • セールスマン型商品は、こうすれば売れる
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  • セールスマン型商品は、セールスマンのセールス活動を中心にしているため、その販売戦略は、これまでのものとは異色のものとなります。

  • a)「コンサルティング販売」
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  • コンサルティングは、サービスの一種とも考えられますが、説明とは一線を画した「指導」という強いアプローチです。消費特性として、ユーザーが迷う場合が多いので、このコンサルティング販売という手法は、大きな効果をあげやすくします。
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  • ただし「相談」されて「答える」というのが「コンサルティングの基本」で、相談される前に「押売り」したのでは「コンサルティング」にはなりません。その差は、きわめて大きな違いとなります。コンサルティング販売の基本は、相談される状態を最初に作ることにあるのです。

  • b)「企業イメージ広告によるセールス支援」
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  • 本文販売には、かなり高度のセールス・スキルが必要となります。その第1番の理由は、あらゆる意味で不安を持たれるからです。押売りをはじめとして、訪問販売のスタイルが多くあり過ぎるからです。いったいどこの誰なのか知らないということが多いのです。そこで、大切な2つの原則が登場してくるわけです。
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  • (1)企業の名前を売り込んでおくこと
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  • 広告に化せられた最大の課題となります。セールスマンが名刺を出した時に「あぁ・・・あの会社の人ですか」と思われるケースと、「えっ? どこですか? 聞いたこともありませんが・・・」と思われるのでは、雲泥の差が生まれてくるわけです。
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  • (2)セールスマン自身を売り込んでおくこと
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  • 色々な方法があります。過去には、銀行などでは支店を開く時、銀行マンの写真をウィンドーに貼ったりすることさえありました。現在では、名刺に写真を印刷しておくことなどが代表的ですし、手配りのチラシにセールスマンの写真をのせておくことなども頻繁に行われています。それは、セールスマン自身を売り込んで、地域に結びつかせようとするためです。

  • c)「セールスマン・スキル・アップ支援」
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  • いわゆる、セールスマンのセールス技術の向上のことです。セールスマンのセールスは訪問販売の技術です。訪問販売は、セールスマンの腕、能力によって大きく結果が左右されます。セールスには「反射的な対応力」が必要となってくるのです。とはいえ「セールスの授業」が学校にあるわけではありません。
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  • つまり、セールスマンを始めようと思っても、セールス技術を誰からも習ったことさえないのです。そこで「セールスの技術(セールス・スキル)」を修得させることが必要となります。これまで多くの企業が「マニュアル」などで説明し、セールスマンを育てようとしていましたが、結果的にはムダに終わっています。
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  • いちいち経済力や購入事情、性格やニーズが違うユーザーにアプローチするわけdすから、セールスがマニュアルに書いてある通りにことが進むわけがありません。
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  • 従来の練習スタイルは、ロールプレイングでしたが、少々のロールプレイング練習などをするぐらいで、セールス能力が身に付くわけがないのです。そこで「セールスマンの反射力」を鍛えるための「セールスマン教育」が、多くの企業でスタートしています。

  • 「セールスマンの反射力」をトレーニングする項目は、次の2つである場合が多いようです。

  • (1)「ファースト・コンタクト」
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  • セールスには2つの難関があると言われています。その「ひとつ目」が「最初の難関」である「ファースト・コンタクト」です。セールスマンのバイブルとも言える本があります。「セールスは断わられた時から始まる」というタイトルの本です。
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  • タイトルだけを妙に引用すると「断わられても、食らいついていけば何とかなる」という風に受取られてしまいそうですが、実際に著書を読んで見ると「セールスマンは、断わられた時点で、そのお客様へのアプローチはできない。」と明確に書いてあります。「そうなった原因を探し、二度と同じ失敗をしないように進化しろ」というのがこの本の主旨なのです。
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  • それほど「ファースト・コンタクト」は難しいのです。最初の難関を乗り越えなければ訪問セールスは、最初の時点から完全なる失敗に終わってしまいます。ですから、この対策を「反射的」に行う「反射力」が必要となってくるのです。
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  • 何か「良いテクニック」や「裏技」がありませんか? などと質問を受けることもありますが、毎回毎回、まったく違う相手を対応するわけですから「これをすれば間違いなく」といった絶対的な答は存在しないのです。その時々に合わせた最良の答を反射的に導き出す以外には、ありません。
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  • それが証拠に、マニュアル通りにセールスを行って成功が続くといった事例は、皆無なのです。どこのセールスマン研修でも、そういった「マニュアル教育」に行き詰まってしまっているのが現状なのです。
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  • マニュアル順守といいながら、セールスマン候補を「ふるい」にかけ退社に追い込んでしまうか、マニュアルを参考に「自分流を探せ」といった指導を行っているのが正直なところのようです。
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  • さて、話を続けましょう。当然のことですが「ファースト・コンタクト」の後に「もう少し詳しく話を聞いて見たい」「何か自分にとってプラスになりそうな気がする」といった感覚を「相手に持たせること」が最大の課題となるのです。

  • (2)「セールス・ストーリー」と「セールストーク」
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  • 第2の難関は「話を聞いてみよう」というきになったユーザーに対し、カンタンに、しかも、わかりやすく話をするということろにあります。詳しく見ていくと「セールス・ストーリー」と「セールストーク」の2つが並んでいることがわかってくると思います。
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  • 「セールス・ストーリー」とは「自分の魅力を最大限に活かすことのできる話のネタ」であり、そういった「話の内容」として成り立つものです。そして、さらにそれを「自分らしく説明できるように順序立てて整理したもの」が「セールス・ストーリー」ということになります。
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  • 最近では、そういったものを説明するための「パンフレット」や「プレゼンテーション・プログラム(パワーポイントなど)」などが多く用意されているようです。
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  • しかしながら、実際のところ、多くのトップセールスマンの話を聞くと、そういったパンフレットを相手に合わせ、自分流の順序で毎回組み立て直して説明していたり、パワーポイントも、相手に合わせて、自分らしい順序に毎回毎回並べ直して使っているというのが本当のところのようです。
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  • セールス・トークとは、おしゃべりや、世間話のことです。セールス・ストーリーを充分に理解したうえで、相手の合わせて反射的に話を組み立て直し、世間話から、反射的に本題に入るトレーニングが必要になってくるのです。

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それが 成功の秘訣


 
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