「売れてしまう理由」

2)「トコトン分けること」にこだわる




Chapter-9 「デザイン要因」という角度



(1)デザイン要因という角度


購入理由は中身より「デザイン」である

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  • 「広告ができれば売れるのに」「うちの会社には広告をするだけの予算がない。だから売れない。」というようなことを言う人も多いようです。確かに、そういわれてしまうと、そんな気もしてきます。正直な話をすると、この考え方は大間違いなのです。広告規模が小さくても、いいえ、広告が全くなくても売れている商品は、驚くほど多いのです。
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  • 逆に、全国規模で広告を投入して、数ヶ月で世の中から姿を消してしまった商品も驚くほどあるのです。たとえばパッケージ商品を考えてみてください。街のスーパーマーケットに並んでいる商品の半分以上はパッケージ商品です。肉、野菜、魚類、豆腐などの日販品、惣菜関係。そういった商品を除いた、スーパーマーケットの7割近い商品がパッケージ商品です。
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  • 一度、こういう目でスーパーマッケットに並んでいる商品を見てきてください。そこに並んでいるパッケージ商品のうち、大々的に広告がなされている商品が、いったいどれだけあるでしょう。逆にいえば、広告がなされていない商品もまた驚くほど存在していることに気付くはずです。
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  • JRの駅構内に並んでいる「お土産売場」で、お土産をひとつずつ確認してみてください。そこに並んでいるお土産品の、いったいどれだけが広告をされている商品なのでしょう。実際、お土産品の場合、ほとんどが広告などしていないことに気付いていただけるはずです。そしてまた、広告などせずに、驚くほど売れているお土産品があることにも気付いていただけることだろうと思います。
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  • なぜ、こんなことが起るのか、冷静に考えてみてください。自分が買い物に行った時に広告していない商品を全く買わないのかどうか、実際、お買い物に出かけて確かめてみてください。あなた自身が、商品を中身の良し悪しを確認して購入していないことに気付くことになると思います。
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  • あなたは、間違いなく「商品をつくっているパッケージや、ネーミング」という付属的な要素で、そういう商品を購入していることに気付くことになるだろうと思います。この「パッケージ・デザイン」や「ネーミング」といったものが、あなたが商品を買う時に決定的な役割を果たしていることに自分自身が気付くコトでしょう。
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  • ここに気付けば「なぜ大企業が大きな広告予算を投入しても売れない商品が出来上がってしまうのか」という謎もカンタンに解けることでしょう。そうです。ユーザーの購入に関する最終決定は「実際に商品を手にとった時」でしかないのです。いくら知名度があっても、実際の商品を見た時に「美味しくなさそう」だと思えば、その商品は購入されないのです。
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  • これは、薬でも洗剤でも同じです。スーパーマーケットと同じく、パッケージ商品が多く並んでいる「ドラッグ・ストアー」にいって、同じ実験をしてみてください。いくら知名度があっても、実際の商品を見た時に「この風邪薬は、効き目が悪そうだ」と思えば、その風邪薬は購入されません。逆に、知名度がなくても「この風邪薬の方が、効き目が良さそうだ」と「感じれば」、そちらの商品を購入することになるでしょう。
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  • こういった考え方は、従来、パッケージ商品といわれる「小さいサイズの低価格商品」に見られる傾向が強かったのです。しかしながら、最近では、テレビでも、パソコンでも、デジタルカメラでも、自動車でも同じ状態になっています。「デザイン」や「色」が悪ければ売れないのです。女性の愛用者が多い自動車「トヨタのVitz」や「ホンダのFit」も、まさにこのような売れ方をしているのです。
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  • 都会ではあまり見られない光景かもしれませんが、地方にいくと公共交通機関が整備されていないためか、社会人1人に自動車1台という街も少なくありません。実際に、自動車がどのように売れているのかを「試乗会」に見学にいったことがあります。おもしろいものですね。そこにこられていた若い女性と、お父さん、お母さん数組の会話に聞き耳を立てていると、同じような会話をしていたのです。
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  • 母「乗りやすそうで良いじゃない。」 
  • 父「これくらいの値段なら何とかなるぞ」
  • 娘「内装がインテリアっぽくないし・・・自動車のボーディーに好きな色がないわ。それに、外観のデザインも好きじゃない。」
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  • これが、1台100数十万もする自動車を購入したり、しなかったりする理由だったのです。「外観のデザインとカラー」。そして「内装のインテリアらしさ」が、100何十万もの買い物の決め手となっているのです。確かに、世界における日本の自動車の技術の高さには定評があります。どのメーカーのどんな自動車を買おうとも、故障をするようなことはないでしょう。つまり、市場がそこまで熟成すると、結果的には「性能以外の価値」で、購入が決定してしまうのです。
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  • これは、50年近く昔のアメリカにも起った現象です。当時、アメリカの「チェスキン氏」は、このように述べています。「マーケティングにおける4つの柱、つまり、ユーザーが購入する4つの要素とは、パッケージ・デザインと、商品自体のユニークさ、広告のクオリティと量、それらを合計した価値より低い価格のことである。」50年も昔から、アメリカでは「売れない商品のパッケージとネーミングを変更したら売れるようになった」というニュースが業界紙の記事に頻繁に登場していたのです。
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  • ところが、日本においては残念ながら、いまだに「中身が良ければ売れるに決まっている」という職人神話がはびこっています。作り手が、そういう感覚でいつまでいようと、実際のところ、美味しくない商品がスーパーマーケットに並んでいるわけもないほど市場が成熟し、結局のところ、ユーザーは、これらの条件で購入しているのが事実なのです。
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  • このように、商品の「いくつもの構成要素」は、それぞれ購入の決定的な要因になりやすいのです。その要素は次の5つになると考えられます。
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  • a)「製品としてのデザイン(味つけ)」
  • b)「パッケージ・デザイン」
  • c)「ネーミング」
  • d)「価格」
  • e)「企業ブランド力」

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  • これらの要素は、しばしば商品全体のシンボルにさえなるものです。商品デザインの良さ、パッケージの良さ、ネーミングの良さといったものは、それが商品自体の品質やイメージの良さとしてユーザーが受取っていることをご理解いただけたでしょうか。
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(2)製品デザインから見た商品


使い方をデザインするという発想

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  • 友人の建築デザイナーが、独り言をいいながら随分悩んでいました。「困ったなぁ。デザインの前のデザインが決まらない。」この言葉を最初に聞いた時は、本当に驚きました。何を言っているのかさっぱり意味が分からなかったからです。「デザインをデザインする?」そう思いました。そこで、彼がひと息ついた時に質問をしてみることにしました。彼は、話をすることで自分の頭を整理したかったらしく、快く話をしてくれました。
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  • 「ある店の改装を頼まれたんだ。そこで、どういう生活が1番望ましいのかをデザインしていたところだったんだ。たとえば、バリアフリーという生活デザインがある。バリアフリーは、手すりをつけたり、段差を無くしたりという器具を使うことでも、建築的なテクニックのことでもないんだ。たとえば、車イスで右足が不自由な人がいたら、その右足の不自由さだけを建築でリカバーして、人間らしく普通に生活できないかを建築面でサポートすることなんだ。」
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  • 彼は、調子にのって話をゴキゲンで続けてくれました。「問題は、単純に手すりを付けることじゃない。右足が不自由ならば、子の位置に、こういう形の手すりがついてなきゃトイレが使えないじゃないか。という逆算なんだよ。それがバリアフリーという生活デザインなんだ。右足が使えない人は、半人前の人間だという風に考える人もいるけれど、そうじゃない。そういう人は、ただ右足が不自由なだけで、一人前以上の素晴らしい人間だ。」
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  • そこで、友人の有名建築デザイナーはタバコに火とつけて、ひと息いれ、改めて話をし始めました。「今、いったように右足が不自由だというような、ハッキリした目的があるならば、デザインをする前のデザインは既に終わっているんだよ。あとは、右足の不自由を可能な限りリカバーすれば良いだけだ。車イスで移動しても汚れない床材を使うとか、車イスが傷をつけそうな壁の高さをカバーする壁紙を使うとか、いくらでも思いつくことを予算内でやれば良いだけだ。
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  • たとえば、川を渡る橋をデザインしろといわれりゃぁ、そりゃぁカンタンな話さ。ところが、この川を船で渡るのか、渡らなくても良いのか、橋をかけるのが良いのか、実際に、どれぐらいの人が、何を目的にして橋を渡るのか、そこがハッキリしなきゃ具体的な手だてがわからない。結局、橋のデザインをする前に、川の渡り方をデザインしなきゃ、橋のデザインなんぞできやしないんだ。それがデザインの前のデザインなんだよ。
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  • 今、ある店の改装を頼まれているのだけれど、お店の人がどんな売り方をしたいかは聞いてきた。しかし、お客さんがどう買いたいのか、そこがハッキリしないもんだからデザインに煮詰まっていたんだ。お客さんの買い方がデザインできなきゃ、店のデザインなんぞ、できやしないよ。買う人間がいなきゃ、店はなりたたない。いくら売ろうとしても売りたい人間の言うままにデザインすると、お客さんが買いたくない店が出来上がってしまうんだ。」
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  • この話を聞いた時、フッと頭に浮かんだ商品があります。松下電器のテレビ「嵯峨」と、東芝のノートパソコン、初期型の「ダイナブック」です。
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  • 私が生まれたのは1958年。物心をついた頃、テレビが我が家にやってきました。その時、手品の箱のように布が掛けられ、テレビを見るとなると、毎回毎回、おごそかにその布が取られ、家族全員がテレビの前に集まりスイッチを入れるというような習慣がありました。当然、モノクロ(白黒映像)のテレビです。私が一生懸命に見ていたテレビは、上のような箱に足がついているタイプのテレビ。どこの家庭にあるテレビもそうでした。
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  • 忘れもしない事件が起ります。近所の友達の家に遊びに行ったらテレビの画面にカラー映像が映っていました。それは、それは衝撃的でした。東京オリンピックがあるから、テレビを買い替えたと友達は自慢気に言いました。我が家に戻って、その話をすると、うちのテレビはしばらくこのままで、東京オリンピックはカラー映像では観られないという話を聞いて、大泣きした覚えがあります。
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  • 友達の家に、いちいち見に行った東京オリンピックが終わった翌年の秋、我が家に家具調のカラーテレビがやってきました。「ナショナル(パナソニック)の嵯峨」というテレビです。当時のカラーテレビは、我が家にあった白黒テレビと同じように箱の下に足が4本あるものばかりでした。家具のようなテレビは、この「嵯峨」が最初だったのです。そして、面白いことに気付きました。
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  • 小学校の同じクラスのあちこちの友達の家に遊びにいく度に、このテレビを目にすることになります。A君の家も、B君の家も、Cさんの家も、みんなこの「家具調カラーテレビ」が置いてあったのです。つまり、この「和風・家具調テレビ」が大ヒット商品だったことを、幼いながらに実感することになります。小学校低学年の私たちは親の影響も大きく、このテレビを「立派なテレビ」と呼んでいました。
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  • 「日本の一般家庭の部屋に置いて、生活に調和するテレビ」というデザインの前のデザインがなされていたからこそ、あれだけのヒットを飛ばしたのだろうと思います。要するに「工業的なデザインがされる前の生活のデザイン」がなされ、生まれた商品だったからこそのヒット。製品がデザインで売れ始めた最初の頃の商品なのだろうと思います。
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  • 私が会社勤めを始めたころ、会社に置いてあった「ワード・プロセッサー」は、こんな形をしていました。今でこそ、パソコンに「Word」というソフトが入っていて、パソコンで文章も書ければ、「Excel」というソフトで計算もできます。ところが、30年前は「Word」のための機械が必要で、さらに「Excel」のための「電算機」も別に必要でした。サイズ的には、写真にもあるように、これぐらい大きなものでした。
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  • 「専用電算機の通信」に関しては、テープレコーダーに「ピィ〜〜、ヒョロ、ロロロ・・・」といった音が録音され、それを電話回線でいちいち電話をかけて送信するといった手間のかかるものでした。そう思うと、あれからたった20年ほどで、インターネットなどとんでもないコトが現実化されてしまったことになります。
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  • その後、ワード・プロセッサーがドンドン小型化され始めました。今でいうデスクトップというスタイルです。さらに、電算機も、この「仕事のデスク」くらいのサイズの機械が「普通」だった時代に、とんでもないものが発明されました。「ワード・プロセッサー」と「電算機」が1台になった「コンピューター」が発売されました。モニターは黒画面に緑の文字。カラーモニターで色のついた映像が映るなどといったことは、当時では考えられもしませんでした。
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  • 私の20代は、こういう風に事務デスクほどの大きさだった機械がドンドン小型化されていった時代だったのです。そして・・・私が係長に就任したころですから、20年ほど前になるでしょうか、なんと「持ち運びできるコンピューター」が生まれたのです。
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  • 私の務めていた部署に、ワープロのような物が、それはそれは、おごそかに運ばれて上司のデスクの近くに置かれました。それが、この日本で生まれた初代、大ヒット・ノートパソコンだったのです。他にもノートパソコンはあったように思いますが、このパソコンは競合のパソコンの半額以下だったように思います。
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  • これもまた、かつてのカラーテレビのように「手に入る価格」でという「デザインの前のデザイン」があったのでしょう。当時の画面はモノクロだったのですが「液晶の大きな画面」で仕事ができるという驚きと、最新機種ということもあって「事務所の仲間達のあいだで取り合って使った想い出」があります。何より、本体のデザインがカッコよかったのです。触りたくて触りたくて、たまらなかったというのが正直なところでしょう。
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  • さて、本来の話に戻しましょう。1960年代、アメリカでこのようなレポートが「プリンターズ・インク」に掲載されました。
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  • 「製品デザインの判定基準」
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  • ハード商品のデザインの良さを判定する基準として、次の5つの項目があげられます。

  • a)「便利さ」 使いやすいか、安全であるか、効率性は良いか
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  • b)「維持のカンタンさ」 保持・保管に手間がかからないこと
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  • c)「コスト」 安く作れるか? 製造機械、製造手順、運搬など、総ての面で考えて、そのデザインはコスト負担を大きく削減するか?
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  • d)「市場への販売訴求力」 競合商品に勝てる絶対要素があること。ユーザーが受入れやすいこと。目立つこと。訴求力が高いこと。
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  • e)「外観」 バランスが良いか。ライン、素材、色彩などの調和がとれているか。

  • さらに、このような注意書きが書かれていました。
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  • ※)しばしば、デザイナーとエンジニアは対立するものです。デザインが芸術性と近代性に走り過ぎるからです。両者の調和が取れたものにする必要があります。つまり、エンジニアの都合がわかるデザイナーが全体を掌握し、技術的な設計の責任までを加味してエンジニアの調整をすることが必要になるのです。デザイナーは「全体を掌握するコーディネーター」でなければなりません。
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  • 技術者が商品開発の責任者になると、売れる要素が欠落していく傾向が増えていきます。ですから、デザイナーが商品開発の責任者となり、技術面を加味しながら調整する必要が出てきます。ハーレー・ダビットソンでは、徹底して「デザイナー」が中心となったプロジェクトを作り、アメリカのシンボルともいえる人気の高いモーターバイクを作り続けているのです。
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(3)パッケージから見た商品


形態の変更と、デザインの変更で売れるようになる。

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  • このパッケージ変更による売上の大幅な向上の大事件は、きちんとしたマーケティング(販売強化)とマーチャンダイジング(商品開発)の2つを研究する、この道の専門家であれば常識的にご存知の話だろうと思います。私もまた、社団法人「日本包装技術協会」の主催する「包装管理士養成講座」の講師として毎年、招いていただいています。 
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  • その事件が起ったのは1960年のことです。結論から言えば「パッケージの変更が売上を5倍に伸ばした爆発的成功」の事例があったという事実です。
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  • オハイオ州のトレド市にあるキューマン食品の幹部達は、よいパッケージの価値というものを確信せざるえなくなったのです。というのは、ある商品のパッケージを変えたことで6ヶ月のうちに、たちまち売上が500%に急成長したからです。さらに、このパッケージの変更は、小売店や消費者にまで数々のメリットをもたらしました。
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  • 商品は「ポテトチップ」でした。キューマン社は、従来、1.75ポンド(800g)の内容量の商品を入れるパッケージとして金属缶を使用していました。この空き缶はリサイクル・ケースとして使われ、小売店から返送される度に小売店に対して75セントを支払っていたのです。変換されては、洗って、また使われて、平均6回の割でリサイクル使用されるというのが一般的なスタイルでした。
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  • この手間とコストのかかるパッケージ制度に満足できなくなり、キューマン社は安価で対応できる別の方法を考えたのです。ミード・コンテナ社がこの依頼によってポリエチレン製の新しいパッケージを開発したのです。新しいパッケージは、このポテトチップの開発から消費にいたる多くの人に多大なメリットを与えました。
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  • 第1に、四角い形をしていたので、トラック運賃を25%も節約できたのです。さらに倉庫のストックに必要な面積も驚くほど小さくなりました。さらに、小売店でも少ないスペースに多くの商品を積み上げることができたのです。しかも、空缶を返送する手間さえなくなったので、店主たちは大いに喜びました。こうして、メーカーと小売店は、従来の5倍もの売上獲得に成功したのです。
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  • この例は、パッケージの基本形態と材質を変更することで成功した例です。こういった大幅な「形態の変更」や「材質の変更」が現在の日本で可能かどうかというと、何ともいえません。なぜならば、日本の「包装技術」は世界で最高峰といわれているからです。他の国にはなくて、日本にはある。というものが驚くほど多いのです。かといって、起りえないかというと、そういうわけでもないと思います。
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  • そして、多くの場合、成功するタイプは、同じ形のパッケージでありながら、色、模様などデザインを変えるパターンです。
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  • チェスキンのパッケージ論
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  • パッケージに関する調査の権威として知られていた「L・チェスキン氏」は、このように述べています。
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  • 「パッケージは、マーケティングの骨組みを作る製品性能の次に重要な要素です。パッケージは製品そのものを示すシンボルとなります。パッケージこそ製品を「目で見る姿」そのものなのです。ユーザーは製品を判断して購入しているわけでなく、パッケージの良し悪しを判断して購入しているに過ぎないのです。
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  • 今から(1965年ごろ)から25年ほど前、1940年ごろのアメリカでは商店での対面販売が基本でした。その当時のパッケージは「単なる入れ物」であり、ラベルについては、商店主が、他の商品と間違わないように付けられる程度のもので良かったのです。
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  • しかしながら、スーパーマーケットを中心とする現在の販売環境の中で、パッケージは無言のセールスマンとなってしまっています。当時の小売店の店主が行っていた商品の説明も、すべてパッケージを活用し「一瞬」で行わなければならなくなっているのです。」
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  • アメリカの流通の歴史と、日本の流通の歴史を比べると数十年の開きがあります。ガソリンの購入においても、アメリカでは50年も前から「セルフスタイル」をとっていました。日本で「ガソリンのセルフ販売」が定着したのは、ホンの数年前の話です。それほど「消費」というものについてのマーケティングの考え方にズレがあるのです。
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  • 当然、消費を促すために商品を提供する「メーカー側」のノウハウも、アメリカは随分な先進的な感覚を持ち合わせているのでしょう。こういった「メーカー側のマーケティング」を調べていくと、現在の日本は、1960年代後半〜1970年にアメリカでノウハウが構築されていたとオーバーラップする部分が非常に多いことがわかってきます。
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  • では、どのようなパッケージ商品が良いというのでしょうか。正直なところ、パッケージテストを毎回行わなければ「本当に売れる商品パッケージの判別」はできないのですが、チェスキン氏の話を引用しながら「概略」を説明すると次のようになります。パッケージテストを行う前提で、どのようにデザイナーに発注すれば良いのかという考え方で見てください。
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  • くれぐれも注意していただきたいのは、ここに書いてあるまま商品のパッケージデザインを現在の日本で行っても成功するとは限らないということです。何も知らないよりはマシな状態にはなるかもしれませんが、ここに書き出したことが、現状の日本において取るべき戦略ポイントの全てではなく、売れる商品開発のための絶対条件ではないということも重々ご理解下さい。
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  • とはいえ、当時、徹底して理論家されたアメリカのマーケティング論・商品開発論は、確かに現在の日本とオーバーラップするところは多いのです。しかし、ユーザーの「文化性」が違っていること、先進国とはいえ50年前にアメリカで定説だったことを書き出すわけです。現状の日本の状況とは、重なっていない部分が存在していることも重々ご理解のうえ参考にしてください。

  • a)ユーザーにアプローチする「製品の写真(もしくは中身が見える)」がのっているデザインが良い。これと逆のパッケージがマーケティングの有効な戦術になるケースは少ない。(つまり、売上強化にはつながらない)
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  • b)陳列効果が優れた形態で、高い割合で使用中のイメージ、また使用後の良い成果イメージを連想させ、嗜好テストで高い比率を持つパッケージ・デザインの商品が良く売れている。
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  • c)商品名(ブラーンド・ネーム)は、パッケージの重要な要素となる。商品名は読みやすく覚えやすく、商品の使用感をイメージさせることが大切である。
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  • d)色彩もパッケージの重要な要素である。面白いことに「好まれる色」は一般的に記憶に残り難い。また「記憶に残る色」は好まれ難い場合が多い。このどちらの要素も兼ね備え、さらに商品のイメージにあう色彩を見つけられた商品が良く売れている。(パッケージテストを行わなければ決定することは難しい)
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  • e)パッケージは「遠くから読めるか」「遠くから見て目立つか」「使用感、使用後の成果感を感じるか」「嫌われれないか」といった、多角的な調査を行ったうえで販売する必要がある。

  • 日本では、これまでパッケージの重要さはアメリカほど本格的に重要視されてきませんでした。しかしながら、アメリカではその効果性に50年も前に気付いてさまざまな研究が重ねられていたのです。1960年代におけるアメリカの「パッケージ・デザイン料」は、調査費用を含め、平均「1アイテムにつき1万ドル(当時の価格で360万円=現在の価格に換算すれば500万円程度)」だったといいます。
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  • 文献を調べているうちに、その費用の多くが(7割近く)が、エンドユーザーに対するデザインについての「ダイレクト・ヒアリング・イメージ調査費用」だったというから驚きです。(メディアを通したアンケートでは成功しない。というのが実践から導き出された方法で、それは現在でも鉄則とされています。)
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  • しかしながら、失敗商品を売り出した時にはメーカーのブランド力は間違いなく低下します。売れない評判が立ってしまうと後の販売強化策の全てが非効率になり、さらなる販売強化策が必要になってきまます。さらに、売れずに返品された山のような商品の処分費などを考えてみてください。その後の処分費まで考慮すると「これなら売れる」という確証を持って販売するための事前調査費が、どれだけ安いものかがハッキリしてくると思います。
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(4)ネーミングから見た商品


ネーミングこそ差別化戦略の基本です。

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  • ネーミングが商品の重要な要素だということはいうまでもありません。このごろでは特に重要になってきています。それは、次のような理由によるものです。

  • a)マーケットが完全に成熟してしまい、商品分化が激しいのでブランド・ネームや愛称が乱立し泥沼の様相を示しています。
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  • b)洗剤や薬品、菓子類などのように商品そのものの変化や改良よりも、新しいネーミングにすることによあり新商品として登場したように感じさせ、販売につなげるという戦略が成功しています。

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  • これは、単にネーミングの問題ではなく、メディアによる告知が盛んになり、商品の差別化が難しくなってしまった「情報化社会の特色」だと見ると、実に興味深いものがあります。要するに、差別化ということが、競争には絶対に必要なことですから、差別化する要素が見当たらない時は、ネーミングによって「ブランドか」するというのが今日のネーミングというものの戦略価値となっているのです。
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  • ネーミング戦略で有名な企業といえば「小林製薬」です。明治時代に創業した「小林製薬」は、大阪の薬局として誕生しています。薬局ではありながら、雑貨・系商品・洋酒の販売を行っていました。つまり、小林薬品こそ明治に生まれた「ドラッグ・ストアー」の走りだったわけです。その後、卸業を始め、のちに時下薬品を販売し始めます。代表的な薬は「タムシチンキ」でした。
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  • 後に、アンメルツ(肩凝り薬)を発売、トイレタリー分野進出第1段として、トイレ用芳香剤「ブルーレット」を発売します。続いて「わややかサワデー」の売りモンクで有名になった「サワデー」を発売といった展開を見せます。大きくはずみをつけたのは1987年に「新しい会社として生まれ変わる!」という宣言とその宣言のシンボルとした「新しい会社のマーク」の導入期からです。
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  • その頃から、続々と「ネーミング戦略」にのっとった商品を開発し始めます。薬品では「アイボン」「アンメルシン」「アンメルツ」「タムチンキ・パウダー・スプレー」「キズドライ」「サカムケア」「にきび薬ビフナイト」「ヒリピタクール」「のどぬ〜る」「命の母A」「ガスピタン」「チクナイン」「ナイシトール」といった「名前を聞いただけで効能がわかる商品」を世に送り出します。
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  • 「熱さまシート」の登場につづいて「ブルーレットおくだけ」「しみとりーな」「タフデント」などの日用雑貨品まで続々と「名前を聞いただけで効果がわかる商品」までが登場してきました。最近では会社のキャッチフレーズに「あったらいいな。をカタチにする。」という有名なキャッチフレーズまでが市場に定着してしまっています。
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  • ここで注目しなければならないのは、同社の広告は常に「ベタ広告」というスタイルを貫いていることです。「○○でこんなに辛いことになっていますよね。そこで、□□(商品)を使ってください。○○の原因である△△が、こうやって解決します。○○で辛い時には、小林製薬の□□商品・・・」という、徹底した商品説明をするといったものです。しかも、商品名がそのまま「症状解決」をイメージさせるネーミングです。
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  • 日本では、テレビのCMは15秒が基本となっていますが、この広告は、たった15秒の間に商品名を3回も耳に残るように連呼していることになります。(1)「□□(商品)を使ってください。」(2)「○○の原因である△△が、こうやって解決します。」(3)「○○で辛い時には、小林製薬の□□商品・・・」。さらに「面白い名前だなぁ」と感じる商品名となっていますから、その商品名はハッキリと耳に焼き付いてしまうのです。
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  • ここで注目しなければならないのは、同社はたとえそれが薬品であったとしても「薬品の成分」などの説明は、ほとんど行わずに、どんな商品であっても「選挙カーでの立候補者の名前の連呼」のような「ベタ広告」を徹底して行っているということです。明らかに、これらの広告は「商品名と企業名」の知名度向上に力が注がれています。そうやることで売れているのです。
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  • この例は「ブランドが知られる」「企業ブランドが知られる」つまり、有名=売れるということが、いかに大切なことかを雄弁に物語っている好例だといえるでしょう。情報化時代に、ネーミングがきわめて大切であるということは、商品に対する考え方に大きな変化を起こさせます。ネーミングは単に商品を期別するためについているわけではないのです。
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  • 小林製薬が、社内においてどのように社員教育を行っているのか、情報収集を行っているのか、どうやって、このような「面白いネーミング」を産み出しているのかは、おいおい、機会があればご紹介することにしましょう。
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  • ネーミングは商品価値の主要部分を占めているのです。ブランドが強くなればなるほど「ブランド・ネーム」は商品よりも大切な「販売強化における財産」となっていきます。もし、ニコンの一眼レフカメラから、ブランド・ネームである「Nicon」という名前を外してしまったら、その一眼レフカメラの価値は、何分の1かに低下し売れなくなってしまうことでしょう。
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(5)価格からみた商品


価値と価格の関係

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  • 価格というものは「高いか」「普通か」「安いか」の3つしかありません。価格というものは、こういった意味ではきわめてシンプルな判断基準となりますが、よくよく考えてみると、心理的にはきわめて強力に商品を購入する判断材料となり、購入理由や意味合いを物語るものとなります。
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  • 私たちは、充分に理解できない商品を見る時、まず最初に「価格」を見る傾向があります。そして「すごく高い商品だなぁ。これだけ高い商品ならば、きっと素晴らしい商品なのだろう」という風に考えてしまいやすいのです。事実、ユーザーには次のような3つの心理が働くといいます。

  • a)「価格は商品価値のシンボル」商品が類型化し、商品の品質評価がむずかしくなってくると、価格という「ものさし」が商品評価のひとつの基準になっていく。「値段が高い=良い製品」という意識が働くことが多くなります。 
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  • b)「価格と自我意識」 価格の高い商品を購入すると、その高級さが「自分にふさわしい」ように感じやすいのです。これを「価値の同一視」ともいいますが、高額になればなるほど、その商品を手に入れた満足感も大きくなるのです。
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  • c)「価格イメージ」 ユーザーの中には、よく知っている商品に対しては「この商品は、これくらいの価格」という常識のようなものがあります。つまり「価格イメージ」というものができているのです。このイメージによって「高い」とか「安い」といった感覚が生まれるわけです。

  • さらに深めて考えていくと、ひとつの疑問が湧いてきます。「高い、安いというけれど、何を基準に高いと感じたり、安いと感じたりするのか?」ということです。この疑問を調査したのも、やはりイメージ調査の権威「L・チェスキン氏」でした。結論からいうと「価値というものの順当性」が基準になっているのです。つまり「価格>価値」なら高く感じるわけですし、「価格<価値」なら安く感じるわけです。
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  • さらに調査を進めた結果「高そうなパッケージの商品」は「高そうな価値がある」と感じることがわかってきました。つまり、同じ商品を「成果・効果が高そうに見えるパッケージ」に入れれば「高そうな商品」だと感じ、「成果・効果が低そうに見えるパッケージ」に入れれば「安そうな商品」だと感じるのだそうです。同じ値段の同じ商品ならば「高そうなパッケージ」に入っていれば、その価格を安く感じ、「安そうなパッケージ」に入っていれば、その価格を高く感じるのです。
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  • 実に興味深い調査結果です。ここで「高級そうに見えれば良い」と述べていないところにパッケージ制作のヘソを感じる気がします。「成果・効果が高そうに見える」ということと「高級そうに見えれば良い」ということは全く別のものだからです。食品であれば「美味しそうに見える」ことが大切です。いくら「高級そう」でも「美味しそう」に映らなければ高そうな商品とは感じないというのです。
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  • これが文具の「ボールペン」であれば「高級そうなこと」よりも「書き味がよさそう」でなければなりませんし、パソコンであれば「高級そうなこと」よりも「性能が良さそう」でなければならないのです。アミューズメント・パークなら「高級そうなこと」よりも「愉しそう」でなければならなくなります。そう考えれば、ディズニーランドは実に理に叶った広告戦略をとっていることがわかってきます。
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  • とはいえ、価格というものは、しばしばマーケティング戦略や広告戦略の基本方針を決定する目安になります。「高い価値」を訴求できる商品には、高額商品らしさを伝える戦略方針をとらなければ、その商品を購入する理由=本質的な「魅力」を訴求できません。当然、告知戦略も高級な雰囲気をかもし出す表現が必要でしょうし、ノベルティや、店頭での陳列や演出もまた、統一された「高級な雰囲気」を訴求しなければならなくなります。
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  • 近日は、エンドユーザーに近い位置にある「流通側」が価格ゾーンを決定するケースも増えてきています。こうなると、競合商品よりも高い売上を手に入れるための戦略は、ひとつに限られてきます。「より成果・効果が高そうなパッケージ」に入れること。食品であれば、エンドユーザーが競合商品より「美味しそうに感じるパッケージ」に入れることが売上強化の最良の策となるのです。
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  • こうした問題を解決できるのは、メーカーの「ユーザーのイメージ調査」となるでしょう。さらに「L・チェスキン氏」のレポートに興味深い事実が書いてありました。「メーカー側の人間が売れると思ったデザイン」と、「ユーザーが買いたいと思うデザイン」は、96%以上の場合、完全にズレている。という内容のものです。つまり、50年も前から、ユーザーのイメージ調査をせずに、メーカー側の独断で作られた商品は、ほとんど売れない結果となることがわかっていたのです。
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(6)企業ブランドから見た商品


「C.S.戦略」の本当の意味

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  • 商品選択で迷った時は「パッケージ・デザインとネーミングを確認し、価格によってどちらの商品にするのかを決定する」さらに、迷った時の最終的な商品選択条件は「企業ブランド」である。企業ブランドとは、普段からその企業がおこなっている、ユーザーに対するディサティスファイド・キャンセレーション(Dissatisfied cancellation)の質と量の加算によって決定する。

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  • この「ディサティスファイド・キャンセレーション」とは、いったい何なのかを調べてみると「不満の解消」という意味だということがわかりました。実のところ現在頻繁に使われている「カスタマーズ・サティスファクション(Customer's Satisfaction)」という言葉の語源がこの「ディサティスファイド・キャンセレーション(Dissatisfied cancellation)=不満解消」という言葉だったようです。
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  • 確かに、日本人には馴染みのない単語ですから、日本人が聞いた単語を組み合わせた「Customer's Satisfaction」のようが覚えやすいのです。しかしながら、「Customer's Satisfaction」を訳すと「ユーザーの満足」という意味になります。とてもポジティブな意味合いとなりますが、この言葉のままに企業活動を行うと、「欠点はそのままにしておいても、満足な要素を加えれば何とかなる」というようにも聞こえてきます。
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  • さらにいえば、あちらこちらの企業で「顧客満足!」と念仏のように唱えているようですが、顧客が満足しそうな「アイデア=付加価値」を加えることで売上が爆発的に伸びたという事例はないのです。一方、「ディサティスファイド・キャンセレーション(Dissatisfied cancellation)=不満解消」となると、とてもネガティブな言葉に聞こえてきます。こちらの場合「不満」を見つけなければ解消することはできません。
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  • ここで、顧客満足による「企業のブランド化」というのは「ユーザーの不満を解消することによって成り立つ」という見方をしていくと考え方の根本が変わってきます。事実、この戦略によって爆発的に企業が成長した事例は本当に多く存在します。最近では「パナソニック」が「ガスストーブの回収」をこの「ディサティスファイド・キャンセレーション(Dissatisfied cancellation)=不満解消」という戦略に基づいて徹底しておこなっています。
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  • 実際、電器店で「デジタル・ハイビジョン・テレビ」を購入する時の最終的な決め手となるのは「パナソニックなら、何かあった時にも、ちゃんと対応してくれるから・・・」といった理由で、この企業ブランドの商品を購入している人も少なくないのです。1969年の時点でも、やはり同じようなことが起こっています。創業から、たった7年で、創業当時の売上の26倍もの実績をあげた例があるのです。
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  • 東京都台東区にある「富士冷熱」という会社の創業は1961年。こちらの社長(先代)のインタビュー記事が1969年に発刊された業界紙に掲載されていました。こちらの会社は、ビルや店舗などの空調工事をおこなっている、いわば「空調屋さん」という分類の会社になります。そこには徹底した「ディサティスファイド・キャンセレーション(Dissatisfied cancellation)=不満解消」の企業姿勢があったようです。
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  • 「届けた機械がもし不良品だったら新品と取り換えています。部品準備品として、新品をまるまる1台分を用意しています。もしもの時は、その順備品で用意した新品をバラして、部品を取り出し、すぐに対応しています。設置後のフォロー体制として、機械を取り付けた後、巡回サービス員が「その後、いかがでしょうか。不備がありましたら、ご遠慮なくお申し付けください」と不満情報を集める体制をとっています。 
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  • 取り付け作業で欠かすことのできない専門のエンジニアから、大工さんや、左官屋さんに至るまで「フォロー体制要員」と任命し、フォロー最優先の意識付けを徹底しています。当然、新設工事もあるわけですから、余計に人を雇うカタチになります。ふたを開けたら全社員の半数である80名が、常にフォローで動けるような社員数となっていました。
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  • 私どもは、下請けというカタチをとらず、直販営業をしているのですが、結果的に営業人員はドンドン減らす方向になっています。紹介で仕事がドンドン入ってきますから、営業人員は最低限で何とかなるのです。営業が上手な人を雇わなくても、巡回サービスしかできない女性が不満情報を集めに回った時や、フォローにうかがって工事をしている職人が、お客さまから別のお客様を紹介されてしまうからです。」

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  • 「インターネット販売の元祖」
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  • インターネットが本格的に普及されたのは、2000年ごろから。そして、インターネットによる販売が本格的に普及していったのは、2004年ごろからだと言われています。実質的に、先行で利用していた人は、インターネットならば1990年ごろと言われていますが、これは企業中心で、個人で使っていた人は、かなりのマニアだったようです。さらに、インターネットによる商取引も1995年ごろから始まっていますが法律がきちんとできたのは2000年、法改正があり現在のカタチになったのが2004年ということです。
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  • こうなってくると、インターネットによる販売は、まったく新しい分野という風に考えられてしまいがちですが、実のところマーケティングの世界でいえば、そうではないのです。インターネットが整備されるどころか、コンピューターが普及するまえから「ネットワーク通信による販売」というものが行われ、成功した事例が今から45年も前に存在したのです。
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  • ニューヨークの南側にあるメリーランド州のアメリカを代表する商業都市「ボルチモア」にかつて存在した「スチュワート百貨店」は、1960年代に、すでに「電話販売システム」を確立していました。その売上は「店頭売上」と同等の売上にまで上っていました。これは、私がかつて百貨店のマーケティングを扱う部署(販売促進部)に在籍していたからこそ知りえた話かもしれません。
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  • この「ネットワーク通信による販売システム」というものは、「ディサティスファイド・キャンセレーション(Dissatisfied cancellation)=不満解消」つまり「販売後の苦情根絶運動」から生まれたものだったのです。つまり、顧客満足ではなく「顧客不満の解決」という経営方針から生まれた「新しいサービス」であり、この「新しいサービス」がこの「百貨店のブランド=最先端の販売方法をする百貨店」としてアメリカ第2の都市で開花したのです。
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  • 実に残念なことに、アメリカにおいては日本のような「伝承」という分化がなく、創業者が1代で築いたものは、その代で終焉を迎えるという気風があります。ゆえに、こういった「素晴らしい販売システムを持った会社」も経営者の退陣により終焉を迎えることになったのでしょう。とはいえ「販売システム」というマーケティング上の「法則」は残っていたのです。
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  • 私の知る限りでは、この1960年代に構築された「電話販売システム」に実に似かよった販売をしているのが「Amazon」です。つまり、インターネットの「商取引事業システム」は、40年以上も昔に開発された電話を活用した「ネットワーク通信による販売システム」の「電話」が「コンピューターのインターネット」に変り、通信や情報処理の面で進化したものであり、根源は同じだったということです。
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