「加納 光」の Blog
「マーケティング」に関するメモ
2016.06.13
市場調査
By Kanou Hikaru
「リアル情報」をリアルにつかむ
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「DIYや、大型雑貨店などで扱っていただいている《アイデアグッズ》を企画製造している会社の企画部門に勤めております。エンドユーザーの方々に生活で困っていることについてアンケートをとって、その《困ったことを解決するグッズ》を作っているのですが、作ってはドボン、作ってはドボンの繰り返しで、半年もすれば 店頭から外されてしまいます。私は 何か仕事のしかたを間違っているのでしょうか?」というご質問をいただきました。
なるほど・・・ 確かに、よくある話のように思います。永年、商品開発分野まで含んだマーケティングコンサルタントをしていると、この質問文を読んだだけで、いくつかの「落とし穴」にハマっていらっしゃることに気づいてしまうことになります。
まず1点目・・・ 以前の投稿に、このような形で「模範解答」を ご紹介をしたことがあります。
その投稿から肝心な部分のみを抜粋します・・・
(前略)本当に売れている現場に行って「このポイントと このポイントをおさえているからか・・・」という確認をして、本当にユーザーさんのところにいって「何をして欲しいのか要望を聞いて回る」という いちいち面倒な作業・・・ こんなことを クソマジメにやっているコンサルティング会社は希だと思います。(後略)
まず、こちらの質問をして来られた方が「アンケート」というメディアを使っていらっしゃる時点で「インプット情報」がねじ曲がってしまっている可能性が非常に高いのです。
私たちがヒアリング調査をする時、筆記用具やアンケート用紙は「私たち」が持っています。調査対象になる相手は、質問に答えるだけ・・・ 自分で考える間を与えない質問を用意して、ただ「直感」で答えていただくのみ・・・というスタイルを通しています。
「なぜ、そんな面倒なことをするのか? 相手に書いてもらえば良いじゃないの?」 と疑問に思う人もいらっしゃるかもしれませんが、アンケートをご本人が書き込む時点で「好き嫌いの感覚」が「意味不明の理屈」に変わってしまい、アンケート結果を見れば見るほど「意味不明の内容」しか把握できなくなってしまうからです。
人間、好き嫌いという感性と、良い悪いという理性はベクトルの向きが縦と横くらい違っているのです。
アンケートというメディアを使った結果「売れない商品」しか出来上がらず、あとで「いちいち手間のかかるフォロー」をしたり「上司に いちいち怒られて 始末書を書く手間」を増やしたりするより、調査の時点で手間をかけておいて「売れる商品」をガッツリ作ってしまった方が「トータルで考えたら よっぽど手間が少ない」・・・ そう考えているからです。
私も含め、うちのスタッフが百貨店や食品スーパー、ドラッグストアや大型雑貨店などに足を踏み入れたら、最低でも1時間くらいは店内をウロウロしています。
ただウロウロするのではなく、1人の お客さんの買い物の様子を追跡調査しているのです。
「あの商品を見て立ち止まったぞ。あ・・・見ただけだ。こっちの商品を手に取った。あ・・・別の商品を手にとって見比べた。最後に手にとった商品を買い物カゴに入れた・・・」と、そういう様子を追いかけて周り、改めて「この商品は、なぜ見ただけだったのか? こっちの商品はなぜ最後まで残らなかったのか? こっちの商品が なぜ買い物カゴに入ったのか?」 と検証していく・・・
3〜4人のお客さんについてまわって、こんなことをしていたら、アッという間に3〜4時間が経ってしまいます。繰り返しますが、私たちは、こういう「リアルな現象」を手間をかけて追いかけ回しています。
なぜなら、そこまでしないと「この条件を押さえておけば、売れる確率が数段アップする・・・」という明確で具体的な情報が手に入らないからです。
地域差はありますが、百貨店での1人のお客さんの滞店時間は、およそ15分・・・ 食品スーパーでの1人のお客さんの滞店時間は、およそ15分・・・
ドラッグストアでの1人のお客さんの滞店時間は、およそ20分・・・ 大型雑貨店(LOFT や 東急ハンズ)での1人のお客さんの滞店時間は、およそ40分・・・ DIYでの1人のお客さんの滞店時間は、およそ20分・・・
その後、再度検証するのに、その倍の時間がかかります。ですから、百貨店で1人のお客さんを15分 追いかけた後に 30分かけて「立ち止まった原因、手に取るに至った要素、見比べて購入に至った要素」をじっくりと検証していきます。なぜ、そんな調査をするのか? 答は簡単・・・ お客さんは理屈ではなく好き嫌いで、そうしているからです。
アンケート調査では、この「好き嫌い」が解りません。どれだけ理屈を並べても「嫌い」ならば絶対に買わない。好きなら、少々 高額でも買ってしまう・・・ その「好き嫌い」は、アンケートでは絶対に「つかみとれない」のです。
まず、今回質問をして来られた方は、調査〜開発の仕事に関するキャリア不足・・・ そのように感じます。「好き嫌い」まで含めたリアルなリサーチ以外のデータを信じている限り、悪循環はまぬがれない・・・と判断せざるを得ません。
もうひとつ、この方が「致命的な落とし穴にハマっているポイント」があります。それが「トレンドを読んでいらっしゃる様子が見えてこないこと」です。
トレンドに似た言葉に「ブーム」というものがあります。しかし「トレンド」と「ブーム」は、まったく違うものです。「ブーム」は一過性のもので数ヶ月の「流行」のこと。「トレンド」は5年、10年と長きにわたる「流行の傾向のこと」を言います。
たとえば、1990年ごろから15年近くトレンドとなったものに「朝の新習慣」があります。きっかけは「朝シャン」・・・ つまりは、若い女性たちが「朝シャンプーをする」というものでした。
たった1つの「チャン リン シャン」をテーマにした商品からトレンドが生まれてしまったのです。この新習慣のトレンドに乗って「朝シャン用の洗面台」や、吸湿性の高い「朝シャンタオル」などが付随してヒットしていきました。
そして「ちゃんと朝ごはんを食べよう」という「朝の新食習慣」のトレンドのきっかけとなったのが「クノール カップスープ」でした。
当時は小泉今日子さんがCMのキャラクターになっていたような記憶があります。忘れもしないキャッチコピーが「朝ごはん、ちゃんと飲んでる?」でした。あまりにもインパクトが強くて このコピーだけはハッキリ記憶に残っています。
このブームに乗って「カロリーメイト」や「ゼリー状の健康補助食品」「大豆で出来たスナック」などが トレンド便乗商品として、次々と大ヒットをしていきました。
また「朝ごはんは、コンビニで食べよう」・・・といった新しい切り口のコーナーを新設したコンビニエンス ストアまで登場しました。
当然、そのコーナーで食べる「朝ごはん用の品揃え」に コンビニエンス ストアが十分に力を入れたことは言うまでもありません。
続いて登場したのが「ワンダー モーニングショット 朝専用缶コーヒー」でした。「ホッとひと息つく時のジョージア」「気分を変えて気合いを入れ直すためのBOSS」という2大ブランドのおさえているシェアを、それまで全く誰も考えていなかった「朝専用缶コーヒー」という「新習慣」を打ち出して大ヒットしつつ新しいターゲットを手中におさめたのです。
今回、質問をして来られた方が、こういった「時代のトレンド」を、しっかりと把握した上で「トレンドに便乗した商品」かつ「リアルなユーザー情報」を手に入れていらっしゃれば「売れない商品」を作るようなことはなくなります。
「えっ? 今の時代のトレンドは何ですか?」という質問ですか? その質問はご勘弁ください。その答は「私どものメシのタネ」で「有料」で提供しております。ここでは紹介いたしかねますので、あしからず・・・
改めて・・・ トレンドって何ですか? という質問に対して、私たちは、このように答えております。「5年〜10年続く、新しい習慣、新しい作法のこと」・・・ 身の回りを探してみると、必ず「最近生まれた新しい習慣、新しい作法」が見つかります。
そういった「トレンド」をしっかりと見つけたうえで商品開発をしていく・・・ これが「売れる商品開発の秘訣」だと思っていただければよろしいのでは ないでしょうか・・・
ホンキで売上を上げたいのであれば、ここに紹介したノウハウの詳細をゆっくりと読んでいただければ・・・ そのように思います。ホンキで解説していますから、とっても長文ですよ・・・
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